名ヴァイオリニストのフリッツ・クライスラーは、バロック期からロマン派までの多岐にわたる様式に精通し、自らの楽器に語らせる名手であった。浅井咲乃の本アルバムは、クライスラーによるバッハ、ヴィヴァルディ、ベートーヴェン、パガニーニ、ドヴォルザーク、ラフマニノフらによる作品のアレンジを、伸びやかに愛らしく、鮮やかな音色で届ける。浅井がソロコンサートマスターを務めるテレマン室内オーケストラ(指揮・延原武春)との弦楽アンサンブル(今井良による編曲)がそれぞれの様式に奥行きを与え、クライスラー流の名曲の翻訳を愉しませてくれる。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年9月号より)
【information】
CD『クライスラー 偽作&編曲集 弦楽伴奏版/浅井 咲乃&延原武春&テレマン室内オーケストラ』
バッハ(クライスラー編):パルティータ第3番 プレリュード/クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ、ヴィヴァルディの様式による協奏曲/ドヴォルザーク(クライスラー編):ユモレスク/パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ/ラフマニノフ(クライスラー編):祈り 他
浅井咲乃(ヴァイオリン) 延原武春(指揮) テレマン室内オーケストラ
ナミ・レコード
WWCC-8050 ¥3300(税込)

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。



