
右:北村朋幹 ©TAKA MAYUMI
東京都交響楽団8月定期Aシリーズは、尾高忠明が登場。マエストロならではの刺激的かつ洗練されたプログラムを披露する。前半は、1978年5月に尾高の指揮で続けて初演された日本人作曲家の2作品を取り上げる。三善晃のオーケストラのための「ノエシス」は、東京フィルの第200回定期演奏会のために書かれ、個々の楽器群から放たれる強力なエネルギーが大きなうねりを上げ、緊張が持続する。妥協なく知的に組み立てられた比類なき音響世界だ。
一方、松村禎三のピアノ協奏曲第2番は、第4回民音現代作曲音楽祭の委嘱作で、野島稔のピアノ独奏、尾高指揮の東京フィルで初演され、第27回尾高賞および第10回サントリー音楽賞を受賞した。30分超の大作で、巨大で厳格なオーケストラに対峙し、一体化する独奏ピアノは、「単純なモティーフ」の反復で運動性をもつ持続を生み、内省的なモノローグで沈潜する。今回のソリスト、北村朋幹は、ソロや室内楽、協奏曲、さらに古楽器の分野まで手がけ、松村作品をはじめ20世紀の邦人ピアノ作品を集めた演奏会で注目を浴びるなど、同世代のなかで独特の存在感を放つ。1991年生まれの北村は、初演当時の野島と同じ30代半ば。彼の鋭敏な感性は作品を捉え直し、そこに新たな生命を吹き込むに違いない。
溢れ出る音の渦から一転、後半は尾高の十八番のエルガー「エニグマ変奏曲」。英国音楽のスペシャリスト、尾高のタクトでオーケストラは壮麗に鳴り響き、得も言われぬ充足感が広がるだろう。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2026年8月号より)
尾高忠明(指揮) 東京都交響楽団 第1049回 定期演奏会 Aシリーズ
2026.8/8(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問 都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp


