
2003年より、毎年豪華なラインナップで魅了してきたNHK音楽祭。今年は、2つのオーケストラがロシア音楽の粋を演奏する。
英国の伝統×俊英
9月27日は、ロンドン交響楽団。首席指揮者のアントニオ・パッパーノが指揮台に立つ。前半は、HIMARIをソリストに迎え、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番が演奏される。長い亡命生活を送った作曲家にとって、望郷の念を募らせていた時期に作曲された協奏曲だ。主題にロシア民謡を取り入れるなど、先鋭的だった第1番と比べると、古典的かつ抒情性も強い。HIMARIの内に秘めたエスプレッシーヴォが、プロコフィエフのシニカルさまで引き出してくれることを期待したい。
後半は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番。国家との軋轢で窮地に追い込まれた作曲家が名誉を取り戻した起死回生の一曲だ。暗から明へと進むドラマティックな展開、そしてこの作曲家ならではのオーケストレーションの妙を機能性豊かなロンドン交響楽団で聴くことのできる喜び。さらに色彩豊かに仕上げるパッパーノの手腕に注目だ。
深まる名コンビ
そして、11月22日は、今年創立100年を迎えた、ホスト・オーケストラのNHK交響楽団が登場。指揮は、N響との相性も抜群のトゥガン・ソヒエフ。このコンビ、今年1月の定期演奏会で取り上げたプロコフィエフの交響曲第5番は、超絶的な透明感と立体性、強力なアンサンブルで、この作品の異形さまで明らかにした。今回は、11月のB定期(サントリーホール)と同一プログラムでの公演となるが、いつもよりも時間をかけて練り上げられた彼らの演奏を聴く絶好の機会でもある。
演奏会は、アレクサンドル・カントロフをソリストに迎えたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番で開始。甘美な旋律をもち、華麗な技巧とスケール感にあふれたこの協奏曲は、ロシアならではの厚塗りの抒情が際立つ。その初演が成功したことにより、自信を失っていた若き作曲家の前途を開いた曲でもある。カントロフの弾くピアノは、まるでオーケストラのように雄弁。がっぷり四つでN響と向かい合うような演奏が楽しみだ。
そして、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」。ロシア音楽の粋であり、バレエ作品の金字塔ともいわれる曲を、ソヒエフ自らセレクトして編んだ組曲として演奏する。すみずみまでオーケストラをコントロールし、洗練された響きから彩度の高い音色を引き出すソヒエフのチャイコフスキー。今回もN響のポテンシャルを最大限に引き出してくれるはずだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年9月号より)
NHK音楽祭2026
ロンドン交響楽団 2026.9/27(日) NHK交響楽団 11/22(日)
各日15:00 NHKホール
問 ハローダイヤル050-5541-8600
https://www.nhk-p.co.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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