単一楽章という、ひと続きの音楽のなかに、確固とした世界観を息づかせる小菅優の新譜。構成感を明瞭に浮き上がらせる第一人者たるピアニストが、リストやベルクのソナタをしなやかな響きで、しっかりと組み立てる。アルバム冒頭は、ソナタなんて一度も意識したことがない作曲家が、こういうのもソナタじゃないかな、といわんばかりの藤倉大作品。その軽やかさ、新鮮さを丹念に音にしていく小菅。同じ藤倉の「シャドウパス」は、クレックナーのチェロとの二重奏。まるでブラームスかと思わせる、悠然とチェロを歌わせる冒頭から、ピアノ・パートを軸に次々姿を転じていく。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年9月号より)
【information】
SACD『In One Movement リスト・ベルク・藤倉大のソナタ/小菅優』
藤倉大:ピアノ・ソナタ、シャドウパス〜チェロとピアノのための/リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調/ベルク:ピアノ・ソナタ
小菅優(ピアノ)
ベネディクト・クレックナー(チェロ)
ソニーミュージック
SICC 19092 ¥3300(税込)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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