
右:若尾圭良 ©Junichiro Matsuo
8月の東京フィル定期は、人気抜群の“コバケン”こと小林研一郎の登場。今年86歳を迎え、今や日本指揮界の最重鎮格となった彼は、「炎のマエストロ」と称される持ち前の熱い音楽にコクや余情を加えており、まずはその円熟の巨匠芸が聴きものとなる。
もう1つ大きな話題は、俊英ヴァイオリニスト・若尾圭良がソリストを務めること。2006年ボストン生まれの彼女は、21年ユーディ・メニューイン国際ヴァイオリン・コンクール・ジュニア部門および同年のスタルバーグ国際弦楽器コンクールで優勝し、24年にはネルソンス指揮ボストン響と新シーズンのオープニング・ガラコンサートで共演を果たした期待株。今年の夏には同楽団のタングルウッド音楽祭への初出演も予定されている。今回の演目はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。東京フィルとは24年のBunkamura「未来の巨匠コンサート」で(ショーソンとラヴェルを)共演した経験がある点が心強いし、協奏曲名人としても名高い小林のサポートを得てこの名曲をいかに奏でるか? 熱視線が注がれる。
後半はリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。めくるめくアラビアン・ナイトの世界をオーケストレーションの達人が描いたこの曲は、もともと小林の十八番の一つだけに、今回はこれまで以上の色彩感やスケールの大きな表現が期待される。そしてもちろん、コンサートマスターをはじめとする東京フィルの名手たちの華麗なソロも楽しみだ。
これは、巨匠と俊才の興味深いコラボと稀代の名曲を併せて味わえる、注目度抜群のコンサートである。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年7月号より)
小林研一郎(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第176回 東京オペラシティ定期シリーズ
2026.8/6(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1036回 オーチャード定期演奏会
8/11(火・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。

