
内外で進境著しい指揮者の原田慶太楼。古典はもちろん現代作品、とりわけアメリカ音楽を鮮やかな色彩に仕上げる手腕に秀でており、一目置かれている存在。そんな彼が東京シティ・フィルの11月12日の定期に登場。オール・アメリカン・プログラムで真価を発揮してくれる期待の公演だ。
まず注目はマシュー・ジャックファートの「Foggy Moon Over The Gorge」(2024)の本邦初演である。1988年生まれのジャックファートはウェスト・ヴァージニア大学、テキサス大学などで学び、クラシック作品に加えて、ラジオやテレビなどの音楽の創作、さらにはラジオ番組の司会を務めるなど、その守備範囲は幅広い。モダンな響きの中に親しみやすい旋律や躍動的なリズムなども織り交ぜたスタイルが特徴で「よき中庸さ」を備えた作曲家だ。今回初演される作品は彼の代表作でもあり、タイトルは、「渓谷にかかる霧につつまれた月」くらいの意味。ウェスト・ヴァージニア州のニューリバー渓谷から発想を得ているという。チェレスタやヴィブラフォンなどを駆使した幽玄な響きが印象的だ。この作品に続いて演奏されるのが、臨場感たっぷりの情景描写と壮麗な管弦楽法が魅力のコープランドのバレエ音楽「アパラチアの春」(全曲)とグローフェの組曲「グランド・キャニオン」である。ジャックファート作品も含め3曲ともアメリカの自然にちなんだ音楽だ。20世紀から21世紀のアメリカの音風景の旅にいざなう楽しいコンサートとなろう。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2026年8月号より)
原田慶太楼(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第388回 定期演奏会
2026.11/12(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp

伊藤制子 Seiko Ito(音楽学・音楽評論)
東京藝大、同大大学院修了。現在、東邦音大・同大学院、静岡文化芸大、日大講師。日仏の20世紀以後の音楽、音楽美学を研究するかたわら、音楽評論、海外オペラ取材なども行う。2017年のモンテヴェルディ生誕450年イヤーにヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場のモンテヴェルディ三部作の上演を取材。音楽以外のライフワークは旅と俳句。奈良、ヴェネツィアなどで史跡を探索するのが趣味。


