

文:小宮正安
日本の多くの地域に比べ、ウィーンでは秋の到来が早い。9月中頃から感じられていた秋の気配がぐっと強まる中、気温が一挙に下がり、コートが手放せなくなる。黄色く色づいた木々の葉が太陽の光を浴びて黄金色に輝く日もあるいっぽうで、冬を先取りしたかのように分厚い雲が空を覆う日も増えてゆく…。
そうした季節において、にわかに活気づくもの。それこそが、インドアでの催しだ。ウィーンでの演奏会シーズンが本格的に始まるのが10月、というのも頷ける。しかも今年は、シーズン中の目玉とも言える催しが、シーズン開始早々開かれるのも見逃せない。それこそ、「音楽の都ウィーン」を象徴するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が、彼らの本拠地である楽友協会大ホール(通称「黄金のホール」)に登場する演奏会。しかも指揮は、クラシック音楽界の巨匠リッカルド・ムーティだ。

世界最高の音楽がここに
すでに数十年以上にわたって協力関係を築き上げてきたムーティとウィーン・フィル。音楽監督や常任指揮者を置かず、客演指揮者を招き続けるシステムをとっているウィーン・フィルにしてみれば、それは異例の状況といえるだろう。世界中に中継される楽団の名物企画「ニューイヤー・コンサート」で共演を重ねてきたほか、ウィーン・フィルにとって様々な節目となる演奏会で指揮をとるなど、今やこの名門オーケストラにとってなくてはならない存在となっているのがムーティである。両コンビの絶好調ぶりが広く知られるようになったここ10年ほどは、演奏会も発売とほぼ同時にソールドアウト。キャンセルチケットを手に入れようにも、手に入れられないほど人気が高いコンビに他ならない。
しかも今回の演奏会では、ピアノ独奏者として、今や押しも押されもせぬ世界の巨匠である内田光子が登場する。若き日にウィーンに学び、ウィーン・フィルとの数々の共演を含め、事あるごとにこの街で演奏活動をおこなってきた彼女の指から繰り出される円熟の妙技を、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」で体験できる千載一遇の機会である。なおムーティ&ウィーン・フィルのコンビは、この後日本公演をおこなうが、内田との「ピアノ協奏曲第4番」の演奏が披露されるサントリーホールでのガラ・コンサートはすでに完売となっている。つまり内田との共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴く機会をこれから得ることができるのは、ウィーンだけということになる。
さらにこの演奏会では、ベートーヴェンとブラームス(交響曲第2番)という、ウィーンの歴史を形作った2人の音楽家の王道的な作品が取り上げられるのも、大きなポイントだ。最近では、独墺圏以外の音楽家の曲、さらには現代作品を手掛けることも少なくないウィーン・フィルだが、やはりこのオーケストラの美質が端的に現れるのは、楽団が創設された19世紀ウィーンの作品ではないか。そうしたところにも、今回の演奏会にかけるムーティとウィーン・フィルの意気込みが如実に伝わってくる。

オペラも、美術も、秋のウィーンをゆったりと味わう
そんな「目玉公演」を組み込んだこのツアーだが、もちろんそれだけでは終わらない。世界トップクラスのオペラハウスであるウィーン国立歌劇場での公演(しかも人気演目の『カルメン』で、カルメン役にステファニー・ドゥストラック、ドン・ホセ役にロベルト・アラーニャという二大スター歌手が予定されている)が、しっかりと組み込まれているからだ。実のところ、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーが自主的に運営している演奏会用オーケストラがウィーン・フィルであることはよく知られた話だが、彼らがいわば「本業」のオペラのオーケストラとしてどのように歌手に合わせ、「第二の歌手」としてオペラというドラマを音によって紡ぎ出してゆくのか? ウィーン国立歌劇場では、シーズン中ほぼ毎日のようにオペラやバレエの上演がおこなわれるが、文字通り「音楽の都ウィーン」に具わった日常的な底力を知る、絶好の機会となるだろう。
さらにオプションとして、他にも国立歌劇場での公演や、同歌劇場と双璧をなすフォルクス・オーパーでのオペラ公演、楽友協会やコンツェルトハウスでの演奏会などが用意されているのも嬉しいところ。あるいはこれらのオプショナル企画に特に参加しなくても、ベートーヴェンやブラームスも生活したウィーンのそこかしこに赴き、街歩きや美術館・博物館訪問などをたっぷり楽しむ時間に当てることもできる。

それもこれも、往復を入れて7日間というゆったりとした旅程が組まれているため。しかも往復共に、オーストリア航空の直行便という点も、昨今の世界情勢の中では大変嬉しいところだ。滞在先のホテルも、楽友協会や国立歌劇場といったウィーンのハイライトが立ち並ぶ中心街のほど近くにあるため、歩いてウィーンの街を楽しむことができる。
そうなのだ。もちろん一流の音楽に触れる機会を重視する一方で、このツアーではそうした音楽が生まれてきたウィーンという街に今でも生き続ける心の余裕に浸れるという、最高の仕掛けが施されており、またそれこそが、時に忙しくささくれ立った現実を送らざるをえない私たちにとって、何よりも贅沢なひと時ではないか?

郵船トラベル
ウィーン滞在 7日間
〈2026年10月8日出発〉
旅行期間:2026.10/8(木)~10/14(水)
出発地:東京
日数:7日間
スケジュール
●10/8(木)
成田発(11:10)空路、直行便にてウィーンへ。
ウィーン着(18:20)着後、専用バスにてホテルへ。(所要約30分)
●10/9(金)
9:00~14:30|ウィーン観光(○市立公園、○王宮庭園内モーツァルト像、◎聖シュテファン大聖堂、○モーツァルトハウス、○ケルントナー通りなど)
14:30|ご昼食後、ホテルへ。ご自由にお過ごしいただきます。
●10/10(土)
自由行動
★ベートーヴェンゆかりの地めぐり ベートーヴェン博物館&ベートーヴェンの散歩道散策〈昼食付/9:30~14:30〉
【鑑賞】ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(15:30開演 楽友協会 大ホール)
●10/11(日)
自由行動
【鑑賞】ウィーン国立歌劇場 ビゼー《カルメン》(19:00開演 ウィーン国立歌劇場)
●10/12(月)
自由行動
★ハプスブルク家の栄華の象徴【世界遺産】「シェーンブルン宮殿」観光〈昼食付/9:30~14:30〉
●10/13(火)
ホテルをチェックアウト。 専用バスにて空港へ。(所要約30分)
ウィーン発(13:30)空路、直行便にて 帰国の途へ。
●10/14 (水)
成田着(8:50) 着後、解散。おつかれさまでした。
問:郵船トラベル 音楽・美術ツアー専用デスク03-6774-7940
https://www.ytk.jp/music/

