2024年、生誕200年のブルックナー・イヤーの第9番。下野竜也と名古屋フィルの充実ぶりを端的に示すライブ録音で、聴き応え十分。第1・3楽章が23分ずつ、計57分弱と演奏時間としては短めだが、テンポが速いとは感じない。全体の見通しがよく、流れは安定し、すべての場面が有機的につながっていて、不自然さがない。これをブルックナーで実現するのがいかに難しいことか。演奏も剛健だがしなやか、力みはないが力強く、各セクションの練られた音色の美しさ、要所では濃密に主張する金管。最後の壮烈なクライマックスも彼岸のコーダも、あくまで自然体に美しく。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年7月号より)
【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第9番(原典版)/下野竜也&名古屋フィル』
ブルックナー:交響曲第9番(原典版)
下野竜也(指揮)
名古屋フィルハーモニー交響楽団
収録:2024年11月、愛知県芸術劇場 コンサートホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00919 ¥3850(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。


