表立っては書かれていないが、このディスクには一つの大きなテーマがある。プロデューサー西耕一の耳と人脈がそれだ。作曲家たちとの長い親交を経て埋もれた作品に息を吹き込み、老大家や気鋭に新作を委嘱して、若手演奏家に楽譜を託す。小さく閉じがちな現代音楽の外側に同時代の創作の痕跡を見つけ、日常を生きる私たちをオーケストラ芸術に結び付ける。そのフィランソロピーの精神が生み出したのがこの2枚だ。雅楽風の「君が代」にはじまり除夜の鐘、アイヌを題材とした交響曲、そして現代アニメを思わせる躍動的なリズムまで、そこに日本の戦後が歩んだ創作の軌跡が浮かび上がる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2026年8月号より)
【information】
CD『日本のシンフォニストたち―幻の交響作品と新たな創造/野村英利&オーケストラ・トリプティーク』
黛敏郎編:日本国歌「君が代」/黛敏郎:パッサカリア/三木稔:交響曲「除夜」/水野修孝:交響曲第5番/團伊玖磨:交響曲第1番イ調/伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ/和田薫:MATSURI! 他
野村英利(指揮)
オーケストラ・トリプティーク
竹蓋彩花(エレクトーン)
収録:2022年12月 なかのZERO(ライブ) 他
スリーシェルズ
3SCD0082(2枚組) ¥3056(税込)



