ネーメ・ヤルヴィと母国の名楽団の大作集。「ドイツ・レクイエム」は意外なほど落ち着いた構えで、響きの純度は高く、どの楽章も胸に迫る。自然な呼吸感での流れ、穏やかなフレーズの深みと広がり、頂点の瞬間の偉大な響きには陶然。合唱団も澄んだハーモニー、かつヒューマンな熱さもある。長い結尾和音まで感銘深く、円熟を感じる名演。それがブルックナー4番は60分を切る快速演奏、巨匠性皆無の構築で、やはりネーメだ。1・2楽章はもはやアラ・ブレーヴェ、スケルツォはリピート後、主部を半分で終了。「民衆の祭り」は珍品の快演、「ヘルゴラント」は切迫した力感があり感動的。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年8月号より)

【information】
CD『グレート・マエストロ XVIII - XIX/ネーメ・ヤルヴィ&エストニア国立響』
ブラームス:ドイツ・レクイエム/ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ノヴァーク版)、カンタータ「ヘルゴラント」 他
ネーメ・ヤルヴィ(指揮)エストニア国立交響楽団
エリーナ・ネチャーエヴァ(ソプラノ)
アトラン・カルプ(バリトン)
ラトヴィア国立合唱団
エストニア国立男声合唱団
収録:2019年5月&9月、タリン(ライブ)
Estonian Record Productions/東京エムプラス
JERP 12622(2枚組) ¥7000(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。

