
佐渡裕は、2023年の新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督就任以来、定期演奏会で、「ウィーン・ライン」と銘打って、ウィーンと関わりの深い作曲家の作品を取り上げている。それは、佐渡自身がオーストリアの名門トーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督を2015年から25年まで務め、そこで得たものを、日本の聴衆に伝えようと始めたシリーズである。
近年の佐渡は、強引にオーケストラを駆り立てる指揮姿が減り、まず、力まず、オーケストラから良い音を引き出そうと指揮しているように感じられる。つまり、トーンキュンストラー管を響きの良いウィーン・ムジークフェラインザールで定期的に指揮することによって、佐渡の中で何か大きな変化が起きたに違いないと思われるのである。ムジークフェラインザールで、ハイドン、ブルックナー、マーラーなどを継続的に振ることによって、それぞれの作品に最も合った響きを体得したのであろう。
佐渡は、新日本フィルの9月の定期演奏会でブルックナーの交響曲第5番を取り上げる。ブルックナーの第5番は、彼の交響曲のなかでも、最も構築的で、フーガやコラールを駆使した、まさに音の大伽藍というべき作品である。感情的になるよりも、一つずつ音を組み立てていくことが望まれる巨大な交響曲。佐渡が音楽監督に就任して以来、若く優秀な奏者が何人も入団している新日本フィルが、佐渡監督とともにどんなに美しい響きを作り上げるのか、興味津々である。
文:山田治生
(ぶらあぼ2026年8月号より)
佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 第672回 定期演奏会
〈サントリーホール・シリーズ〉 2026.9/25(金)19:00 サントリーホール
〈トリフォニーホール・シリーズ〉 9/26(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問 新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp

山田治生 Haruo Yamada
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。


