
渡辺 康/上江隼人
年末恒例のベートーヴェンの「第九」。今年の東京フィルハーモニー交響楽団の「第九」は、角田鋼亮が振る。
角田は、2019年から常任指揮者、24年からは音楽監督を務めるセントラル愛知交響楽団で目覚ましい成果をあげ、在京オーケストラともしばしば共演する、中堅世代で最も注目されている日本人指揮者の一人である。東京藝術大学及び同大学院で学んだのち、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学でクリスティアン・エーヴァルトに師事。ドイツ=オーストリア音楽を得意としている。東京フィルとは今年も、ニューイヤー・コンサートや「午後のコンサート」などで共演を重ね、同楽団から厚い信頼を得ている。東京フィルの「第九」は2021年に続いての登壇。その際は、若々しく生気に満ち、キレの良い演奏を披露。大作に物怖じせず、第1楽章から思い切りよく速めのテンポで進めていき、第4楽章でも、熱く、激しく、オーケストラや合唱を鼓舞していたのを思い出す。今回は、今最も注目されている若手ソプラノの一人、迫田美帆をはじめ、中島郁子、渡辺康、上江隼人の独唱も楽しみである。
演奏会の前半には、今年が生誕200年にあたるヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「もろびと手をとり」が演奏される。ブラームスに捧げられ、アーノンクールも好んだ名曲。ベートーヴェンの「第九」でも歌われるシラーの詩のフレーズ「抱き合え、もろびとよ!(=もろびと手をとり)」をタイトルとしていて、「第九」の前に演奏されるにふさわしい作品である。
文:山田治生
(ぶらあぼ2025年10月号より)
東京フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン「第九」特別演奏会2025
2025.12/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/20(土)19:00 サントリーホール
12/21(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp

山田治生 Haruo Yamada
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。


