ベルリン・フィル首席オーボエ奏者アルブレヒト・マイヤーがモーツァルトの協奏曲で共演

右:アルブレヒト・マイヤー ©Matt Dine
7月、読響の指揮台に初めて立つのは、ブルガリア生まれの新星、デリヤナ・ラザロヴァだ。第1回ジーメンス・ハレ国際指揮者コンクールで優勝後、ハレ管弦楽団でマーク・エルダーのアシスタントを務め、2020年から3年間ハレ・ユース・オーケストラの音楽監督に。ケルンWDR交響楽団とフランス国立管弦楽団ではクリスティアン・マチェラルのアシスタントも務めた。今秋から、ユタ交響楽団とBBCスコティッシュ交響楽団の首席客演指揮者に就く。
東欧やロシアの音楽を主要レパートリーに、同時代の音楽にも関心が高いラザロヴァ。今回は、彼女の持ち味が発揮されるプログラムが組まれている。
一曲目は、この指揮者と同じ街に生まれた作曲家ドブリンカ・タバコヴァによる「オルフェウスの彗星」。ジョン・アダムスやルイ・アンドリーセンの薫陶も受けた彼女の作品は、ポスト・ミニマル風に進み、最後は混沌のなかからモンテヴェルディのファンファーレが鳴り響く。
続くモーツァルトのオーボエ協奏曲は、有名なハ長調(K.314)ではない。ヘ長調(K.293)の61小節のみ残された未完成の断章をゴットハルト・オダーマットが補筆完成させたものだ。独奏者は、この補筆を委嘱し、ベルリン・フィル首席奏者を長らく務める名手、アルブレヒト・マイヤー。その芳醇な歌謡をたっぷりと堪能できるはず。
そして、読響でも多くの指揮者が名演を重ねてきたリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」。ブルガリアの新星がどのようなアプローチで聴かせるのか。興味の尽きぬ演奏会になることは必至だ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年7月号より)
デリヤナ・ラザロヴァ(指揮) 読売日本交響楽団
第279回 土曜マチネーシリーズ
2025.7/19(土)
第279回 日曜マチネーシリーズ
7/20(日)
各日14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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