
あらゆるオーケストラにとって、ブラームスの4つの交響曲は数えきれないほど演奏する定番レパートリーであり、同時に常に真剣勝負の重要作でもある。今年、創立60周年を迎えた東京都交響楽団も、多くの名指揮者たちと共に、ブラームスの名演の数々を重ねてきた。
なかでも語り草となっているのが、2011年アラン・ギルバートとの初共演での第1番である。当時ニューヨーク・フィル音楽監督だったマエストロの初登壇は注目を浴びたが、結果は予想をこえる大成功に。ものすごい熱気と重量感でありながら、しなやかさも併せもち、乗ったときの都響が見せる大きなうねりも現れ、会場が大変な高揚感に満たされたことを筆者も鮮烈に記憶している。初共演後もギルバートは都響と相性抜群で、2018年首席客演指揮者に就任し、いまや相思相愛の揺るぎない関係になっている。
そしてこの7月、ギルバート&都響の「ブラームス交響曲サイクル」が開催される。公演は1番&2番と3番&4番が2回ずつ。今回は第1番が前半になるわけだが、前半だけで客席が騒然とする熱演になるのは確実。もちろん全4曲とも、ますます大きな音楽を構築する名匠となったギルバートと、響きの密度を増して盤石の精度を誇る都響が、充実の名演を作り上げるはず。
ただ、これはもはや指揮者やオケがどうこうという次元にとどまらず、「すごいブラームスを聴きたい!」という方はとにかく行くべきだろう。また今後10年以上、鮮やかな記憶として残っていくのは間違いない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年7月号より)
アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団
都響スペシャル(平日昼)
2025.7/18(金)14:00 サントリーホール
プロムナードコンサートNo.413
7/19(土)14:00 サントリーホール
第1024回 定期演奏会Aシリーズ
7/23(水)19:00 東京文化会館
都響スペシャル
7/24(木)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp
※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。