紀尾井ホール室内管が東京オペラシティへ! 阪哲朗と描く「夏の夜の夢」全曲版

左:阪 哲朗 ©Florian Hammerich/阪田知樹 ©Ayustet/三宅理恵/山下裕賀 ©Yoshinobu Fukaya

 9月、紀尾井ホール室内管弦楽団は、コンサートとオペラ、両輪で活躍中の阪哲朗を指揮台に迎えて定期公演を行う。テーマとなるのは「夏の夜の夢」だ。

 最初の曲はウェーバーの《オベロン》序曲。シェイクスピアの『夏の夜の夢』のエピソードも含まれたオペラの序曲だ。室内管ならではの機動力を生かしたドラマティックな演奏が期待できよう。

 今年3月、びわ湖ホールで阪はコルンゴルトのオペラを指揮して高い評価を得た。今回の演奏会でも、その作曲家の「左手のためのピアノ協奏曲」を取り上げる。戦争で右腕を失ったヴィトゲンシュタインの委嘱で書かれた作品の一つで、ラヴェルやプロコフィエフにも同種の協奏曲がある。そのなかでも、左手だけで弾いていることを聴き手に意識させない、もっともロマンティックな作風が特徴だ。この演奏される機会の少ない曲のソロに挑むのは、実力、人気とも頂点に立つピアニスト、阪田知樹というのも嬉しい。

 コルンゴルトがウィーン時代から仕事を共にしていたのが、演出家のマックス・ラインハルトだった。渡米後、彼が映画『夏の夜の夢』を監督したときに、コルンゴルトはその編曲と指揮を担当する。

 その映画でも使われたメンデルスゾーンの劇付随音楽「夏の夜の夢」。今回は、一般的に取り上げられる組曲版でなく、全曲版での演奏となる。2人のソプラノ(三宅理恵、山下裕賀)と合唱(TOKYO FM 少年合唱団)も加わり、華やかで変化に富んだ幻想世界を奏でてくれるはずだ。

 この公演より、紀尾井ホール室内管は、本拠地である日本製鉄紀尾井ホールの改修工事のために東京オペラシティで定期演奏会を行う。いつもと違うホールでの響きも楽しみだ。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2025年6月号より)

阪 哲朗(指揮) 紀尾井ホール室内管弦楽団 第144回 定期演奏会 
2025.9/15(月・祝)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp
https://kioihall.jp

他公演 
2025.9/16(火) 大阪/住友生命いずみホール(06-6944-1188)