2025年10月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2025年7月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 一昨年(2023年)に来日したウィーン・フィルで、病気治療のため降板したウェルザー=メストの代役として指揮台に立ったのがトゥガン・ソヒエフ。それ以降もソヒエフとウィーンとの関係は良好で、ソヒエフが元旦のニューイヤー・コンサートに登場するのもいよいよ時間の問題…との噂も真実味を帯びていたところ、来年の指揮者はネゼ=セガンと発表され、意表を突かれたファンも少なくなかったかもしれない。だが、ウィーン・フィル来期のシーズン予定が発表されてビックリ。何と10月に“Alle 100 Jahre wieder”(また100年ごとに)と銘打たれた演奏会で、ソヒエフがほぼJ.シュトラウスばかりの演奏会を振る。何これ、はっきり言って「ニューイヤー・コンサート」じゃん!!というわけで、これは10月でも飛びきりの注目公演だ。

 一方のウィーン響の方には、2026/27シーズンからベルリン・ドイツ響の首席指揮者に就くことが報じられている山田和樹が登場。そのベルリンに目を転じてベルリン・フィルの10月を見てみると、第1週には病状が大変懸念されているパーキンソン病療養中のバレンボイムの指揮が予定されている。キャンセル必至ではないかとの厳しい見方もあるが、もしも指揮台に登場すれば、これは大ニュースだ。しかも、この前後に、先月号でも大きく取り上げたティーレマン指揮のワーグナー「リング」ツィクルス公演(ベルリン州立歌劇場)が行われているため、10月初旬のベルリンは話題に事欠かない。なお、ベルリン・フィルの第3週には前音楽監督のラトルが登場、そして最終週には、ペトレンコが日本公演と同じ演目による演奏会を開く。

 ラトルと言えば、現在の手兵であるバイエルン放送響との演奏会でベルク「ヴォツェック」を演奏会形式で上演することも10月の注目公演の一つ。ミュンヘン・フィルの方には、ハンブルク州立歌劇場の音楽監督を退任して客演活動の幅が広がっているケント・ナガノが、メゾ・ソプラノのクレバッサと共に登場する。また、オーボエの名手フランソワ・ルルーが指揮するバンベルク響に、同オケ首席ファゴット奏者の小山莉絵がソリストとして起用されていることにも注目したい。今、バンベルク響のファゴット奏者4名のうち、何と2名が日本人女性。何とも誇らしい思いがする。

 オペラの方では、アン・デア・ウィーン劇場で、ポペルカ指揮、ヘアハイム演出のJ.シュトラウス「こうもり」が興味を呼ぶ。同じ劇場のカヴァッリ「ポンペイウス」も演奏水準の高さが予想される(シャンゼリゼ劇場でも公演あり)。10月は、あまり演奏頻度の高くないザンドナーイの「フランチェスカ・ダ・リミニ」がベルリン・ドイツ・オペラとトリノ王立歌劇場、フィリップ・グラスの「アクナーテン」がリセウ大劇場とフィルハーモニー・ド・パリ(25日)で競合する。ヴェルディ「ファルスタッフ」の競合はそれほどの驚きではないが、同じ月に、ハンブルク州立歌劇場(ビエイト演出)、ドレスデン・ゼンパーオーパー(ミキエレット演出)、ライプツィヒ歌劇場、モネ劇場(ペリー演出)で公演が並ぶのはなかなか壮観。

 ワーグナーの作品では、前記のベルリン州立歌劇場での「リング」(ティーレマン指揮)はもちろん要注目として、ケルン歌劇場での「ラインの黄金」、ジュネーヴ大劇場での「タンホイザー」、フランドル歌劇場での「パルジファル」の各プレミエも見逃せない。他には、ミンコフスキ指揮のモーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」(ベルリン州立歌劇場)、ケルンのフィルハーモニーで上演されるヘンデル「フラーヴィオ」(コンチェルト・ケルン演奏)、バイエルン州立歌劇場(ヘルクレスザール)のR.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」(ストヤノヴァ出演)、ミラノ・スカラ座のヴェルディ「リゴレット」あたりも注目公演。同じスカラ座では、ソプラノのグリゴリアンが、チュ・ヒョンギのピアノとタッグを組むのも面白い。ロト=SWR響などが参加する現代音楽祭(ドナウエッシンゲン)にも要注目。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)