フィンランドの巨匠が山響 十八番のシベリウスで魅せる!オッコ・カム指揮 山形交響楽団 さくらんぼコンサート2025

左:オッコ・カム ©Markus Henttonen
右:神尾真由子 ©Makoto Kamiya

 6月中旬、山形ではさくらんぼの収穫期を迎える。この時期、毎年行われているのが、山形交響楽団の「さくらんぼコンサート」だ。2003年からは東京オペラシティを会場に、2012年からは大阪でも開催している。

 今年は、オッコ・カムを指揮者に迎えてのオール・シベリウス・プログラムだ。  

 79歳になるフィンランドの名匠は、日本のオーケストラとも縁が深い。これまでも日本フィル、神奈川フィル、札響などに客演してきたが、山響とも2018年、24年に共演を重ね、繋がりを深めている。24年公演では、シベリウスの交響曲第1番を演奏。鮮烈なコントラストを伴った表現で聴かせ、繊細さで知られる山響から巨大な音楽を引き出していた。

 そして、その山響も、シベリウスの演奏伝統をもつ。創立名誉指揮者の村川千秋がこの作曲家の作品を積極的に取り上げたからだ。北国の透明なサウンドとも相まって、今では山響といえばシベリウスと言われるまでになった。

指揮、ソリスト、オケ三拍子揃ったシベリウス

 今回のコンサートの冒頭を飾るのは、「鶴のいる風景」だ。この曲は、劇音楽「クオレマ」のなかから、コンサート・ピースとして編曲されたもの(同様の経緯で生まれた「悲しきワルツ」の兄弟曲)。静謐で透明感のある弦楽の響きのなかに、木管による鶴の声が痛切に響く。シベリウス・オーケストラとして、その本領を発揮する演奏になるはずだ。

 ヴァイオリン協奏曲では、神尾真由子をソリストに迎える。神尾もまた、シベリウスとは縁が深い。彼女が世界的に注目を浴びた2007年のチャイコフスキー国際コンクールでは、本選でこのヴァイオリン協奏曲を弾き、見事、優勝を飾ったのだ(最初に弾いたのは、小学校6年生のときだったという)。その後も、国内外のオーケストラでこの作品を取り上げ、その磨かれた技巧と情感の深さで魅了し続けている。オッコ・カムとは、ラハティ交響楽団の来日公演でこの協奏曲を弾き、共演を果たしており(兵庫芸術文化センター管とはチャイコフスキー作品でも共演)、息の合ったシベリウスを聴かせてくれるに違いない。

東京公演での物産展の様子
大阪公演での物産展の様子

売切れ続出!大人気の特産販売

 後半は、交響曲第2番。シベリウスの交響曲のなかでもっとも人気が高く、イタリア旅行中に構想された作品だからだろうか、北欧の陰影感のなかに陽光が差し込むような作品だ。オッコ・カムにとっては、カラヤン・コンクールで優勝した直後、ベルリン・フィルとレコーディングした曲でもある。1982年のヘルシンキ・フィルとの来日で聴かせた演奏も伝説となっている。

 作品の魅力を引き出す、澄み切った響きによる端正なフレージング。深い呼吸感をもった大きな造形を描き、壮麗なフィナーレを築いてくれるだろう。

 そして、「さくらんぼコンサート」といえば、ロビーでオーケストラの地元である山形県の物産販売がずらりと並ぶ。コンサート・ホールが道の駅になったかのように。もちろん、抽選による山形のさくらんぼプレゼントも、この演奏会の楽しみのひとつだ。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2025年6月号より)

山形交響楽団特別演奏会 さくらんぼコンサート2025
東京公演

2025.6/19(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
大阪公演
6/20(金)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール
問:山響チケットサービス023-616-6607 
https://www.yamakyo.or.jp