ラッヘンマン、マーラー――ノットのプログラミングの妙が誘う未知なる体験

ジョナサン・ノット ©T.Tairadate/TSO

 2026年3月に東京交響楽団の音楽監督を退任するジョナサン・ノット。任期満了が近づくにつれて、このコンビの一回一回の演奏が一段と貴重なものに思えてくる。4月12日の東京オペラシティシリーズでは、ヘルムート・ラッヘンマンの「マイ・メロディーズ〜8本のホルンと管弦楽のために」、バリトンのロビン・アダムスによるマーラーの「子供の魔法の角笛」抜粋、同じくマーラーの「花の章」という意欲的なプログラムが組まれた。

 現代のドイツを代表する作曲家ラッヘンマンの「マイ・メロディーズ」は、35分ほどの大作。2016年から18年にかけて作曲された後、2度にわたり改訂され、23年改訂版がバイエルン放送交響楽団により初演された近作である。「マイ・メロディーズ」とタイトルはかわいい雰囲気だが、もちろん中身はモダンだ。ラッヘンマンならではの特殊奏法もふんだんに用いられる。8人ものホルン・ソロが求められ、上間善之、加藤智浩、白井有琳、藤田麻理絵、松坂隼、鈴木優、庄司雄大、伴野涼介といった名手たちが一堂に会する。これまで耳にしたことのない刺激的なサウンドが待っている。

 マーラーの「子供の魔法の角笛」では、ベルン市立劇場やジュネーヴ大劇場、シュトゥットガルト州立歌劇場などで活躍するバリトン、ロビン・アダムスの歌唱に期待したい。おしまいはマーラーの「花の章」。「巨人」から削られた短い楽章でしめくくるという、かなり意外な構成だ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年4月号より)

ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団
東京オペラシティシリーズ 第144回
2025.4/12(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp