2026年10月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2026年7月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 セミョン・ビシュコフの指揮で行われたベルリン・フィル5月最終週の定期演奏会。ここで、日本人がクラリネットの首席奏者を務めるという驚くべき出来事が実現した。日本人が管楽器のトップ奏者を務めるのは長いベルリン・フィルの楽団史上初めてとのこと。昨年のベルリン・フィルへのHIMARIや山田和樹のデビューは確かに大きなニュースとなったが、彼らはいわば「共演者」。ゲスト出演とはいえ、スーパースター揃いのベルリン・フィルが自分たちの「仲間」として日本人を首席奏者に迎えたという事実には、もはや計り知れない価値があるだろう。その奏者は小林龍太さん。まだ弱冠23歳の若手も若手だ。にもかかわらず、来シーズンからケルンWDR響の首席クラリネット奏者に就任することが決まっている。大器の今後の大活躍に期待したい。

 さて、オペラ関係ではワーグナーに重要なプレミエ公演が4つ並ぶ。まずは、ベルリン・ドイツ・オペラの「さまよえるオランダ人」。演出を担当するミロ・ラウに目が離せない。というのも、ラウは単なる演劇人の領域を超え、政治殺人国際研究所の設立など、社会活動家としても知られたスイス出身の人物で、演出手法も、出来事を徹底的にリサーチしてそれを舞台上に再構成するドキュメンタリー演劇法を得意とする。それだけに「さまよえるオランダ人」をどのように表現するのか期待値は非常に高い。次にバイエルン州立歌劇場の「ジークフリート」。ハンブルク州立歌劇場の総監督でもあるクラッツァーがハンブルクより先に進行させているミュンヘンでの「リング」。その第3作が今回の「ジークフリート」。知的で論理的な「読み替え」と評される演出法がこの曲にいかに反映されるのか、これもとても楽しみだ。3つ目はパリ・オペラ座の「神々の黄昏」。ビエイトの演出とエラス=カサドの指揮とのコンビで「リング」が完結する。4つ目は英国ロイヤル・オペラの「パルジファル」。フルシャの指揮やゲルハーヘルのアンフォルタス役など、これまた見所の多い上演だ。「さまよえるオランダ人」に関しては、他にも、アン・デア・ウィーン劇場での上演も注目作。

 その他のオペラでは、ウィーン国立歌劇場のツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」(グリゴリアン出演)、エッセン歌劇場のコルンゴルト「ヘリアーネの奇跡」、10月から引き続きのスポンティーニ「ヴェスタの巫女」(ベルリン州立歌劇場・シュタイアー演出)、同じ劇場のモーツァルト「フィガロの結婚」(ミンコフスキ指揮)、ゼンパーオーパーのヴェルディ「仮面舞踏会」プレミエ(ガッティ指揮)、フランクフルト歌劇場のモーツァルト「ツァイーデ」(ペトルー指揮)、ヘンデル「オットーネ」(ルクス指揮)、ジュネーヴ大劇場のマルタン「嵐」、ミラノ・スカラ座のグノー「ファウスト」(ルスティオーニ指揮)、トリノ王立歌劇場のレオンカヴァッロ「ラ・ボエーム」(プッチーニの曲ではない!!!)、パルマ・ヴェルディ音楽祭の各上演など思わず興味を引かれるものが揃っている。

 オーケストラでは、11月の来日を控えたムーティ指揮のウィーン・フィルやラトル指揮のバイエルン放送響はやはり注目。中でも、バイエルン放送響は、日本では演奏されない作品を含むストラヴィンスキー特集公演(「詩編交響曲」「星の王」「葬送の歌」と「春の祭典」)は魅力的。これは日本でもやってほしかったプログラムだ。ペトレンコ=ベルリン・フィルのR.シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」、山田和樹のベルリン・ドイツ響首席指揮者就任記念公演、ガッティ=シュターツカペレ・ドレスデンのマーラー10番、メータ指揮のミュンヘン・フィル、サロネン=パリ管のマーラー「大地の歌」、コンセルトヘボウ管を久石譲が振るスタジオ・ジブリの映画作品集なども要注目。それに加えて、10月は現代音楽をテーマとする公演が多数行われる(SWR響の参加するドナウエッシンゲン・ムジークターゲ、バイエルン放送響のムジカ・ヴィヴァ、ケルンWDR響のムジーク・デア・ツァイト他)。そして、器楽系では、レヴィットがベートーヴェンのピアノ・ソナタに集中的に取り組むウィーンのムジークフェライン公演が大注目。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)