若い音楽家たちの“いま”が、ステージに立ち上がる。ローム ミュージック ファンデーションがサポートする奨学生たちが、日々の研鑽の中で培ってきた成果を披露する「スカラシップ コンサート」。
このシリーズの面白さは「若手紹介」にとどまらないところ。コンサートとして十分に聴き応えのある構成になっている。今年は京都、東京で全5公演。「旅」というテーマのもと、29人の奨学生が多彩なプログラムを持ち寄る。

2024年東京音楽コンクール優勝の金子芽以(ヴァイオリン)が取り上げるのはショーソンの「詩曲」(Vol.56公演)。彼女のしなやかな歌が、作品の濃密な抒情を引き出す。エリザベート王妃音楽院に在籍する青島周平(ピアノ)は、精緻な響きとリズムの切れ味が印象的なラヴェル、そしてアルベニスを奏でる。音の輪郭が鮮やかに浮かび上がる(Vol.57 & 59)。
ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーで研鑽を積んだ瀬千恵美(クラリネット)が森田啓介(チェロ)、稲積陽菜(ピアノ)とともに取り上げるブラームスのクラリネット三重奏曲は、やわらかな響きが重なり合う音楽。落ち着いた音の流れに身を委ねたい(Vol.56)。竹内鴻史郎(ヴァイオリン)、笠井大暉(ヴィオラ)、柴田花音(チェロ)、樽谷公平(ピアノ)による、同じくブラームスのピアノ四重奏曲第1番は、厚みのある響きと力強い推進力が際立ち、スケールの大きな音楽の広がりを感じられる(Vol.59)。
日本管打楽器コンクール第1位の五十嵐健太(サクソフォン)が取り上げる、サクソフォン黎明期のベルギーの作曲家ジャン=バティスト・サンジュレーは、華やかな技巧と明るい音色が魅力。のびやかな演奏が会場を彩る(Vol.56 & 57)。
その五十嵐が吹く石川健人作品(Vol.56 & 57)と、2022年マウリツィオ・プラトラ国際古楽コンクール優勝の会所幹也(テオルボ)が奏でる波立裕矢作品(Vol.58 & 60)の、2つの新作初演にも期待。石川が2024年に、波立が2022年に、いずれも芥川也寸志サントリー作曲賞を受賞した、いま注目の作曲家たちだ。立ち上がる新しい響きに耳を澄ます瞬間。

舞台に華やぎを添える声楽。金子紗弓(メゾソプラノ)や野町知弘(バリトン)が歌うベルカントのオペラ・アリア(Vol.58 & 59)、保科瑠衣(ソプラノ)のヴィヴァルディ(Vol.57 & 60)や、久保法之(カウンターテナー)が会所のテオルボと共演するバロック・レパートリー(Vol.59)で、声の豊かな表情の広がりを楽しみたい。
白井翼(テューバ)と南波美月姫(ハープ)という珍しい編成のデュオでは、キャラクターの異なる、しかしやわらかな音色の組み合わせが新鮮に響くはず(Vol.60)。また、尼子裕貴と朴沙彩の2台ピアノによるブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」では、華やかで厚みのあるサウンドが広がり、ダイナミックな音の交錯が聴きどころとなるだろう(Vol.56 & 57)。多彩な音楽が自然につながって、フレッシュな個々の演奏とともに、大きな流れを楽しめそうな構成がうれしい。
ローム ミュージック ファンデーションは、奨学金の給付だけではなく、研修や交流機会の提供、さらには心身のコンディションを支える「心体サポートプログラム」など、実践的な新しいサポート体制も模索している。そんな環境で育まれた音のひとつひとつが、このコンサートで出会う。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2026年6月号)
ローム ミュージック ファンデーション スカラシップ コンサート 2026
【Vol.56】2026.7/25(土) 【Vol.59】8/22(土) 【Vol.60】8/23(日)各日14:30
京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小)
【Vol.57】2026.8/1(土) 【Vol.58】8/15(土) 各日15:30 浜離宮朝日ホール
問:otonowa 075-252-8255(京都) 1002(イチマルマルニ) 03-3264-0244(東京)
https://www.rmf.or.jp/jp/lp/scholarship_2026/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。
