
東京シティ・フィルが定期演奏会を開いているティアラこうとうの改修に伴い、全3回が予定されている「すみだトリフォニーホール・特別シリーズ」の第2回は、情熱的な音楽を紡ぎ出す首席客演指揮者、藤岡幸夫のタクトで。
マエストロは邦人作曲家による名作を積極的に紹介している。前半は戦前にベルリン・フィルを振って自作を演奏するなど華々しく活躍したが、28歳という若さで世を去った夭折の天才・貴志康一による「日本歌曲集」だ。日本的な音階をベースに、当時の日本人の日常生活に響く音や情緒を自在に取り込んでおり、それらは単なる懐古趣味を超えて往時の日本を克明に描写した生きたドキュメンタリーとなっている。ドイツで出版されたという本作の、時にマーラーを思わせる見事なオーケストレーションにも着目したい。
ソリストの野々村彩乃はクラシックの枠を越え、各種イベントの国歌独唱やゲーム音楽、アニメーション音楽まで、幅広いジャンルで活動している。貴志が楽譜に刻んだ日常のリアリティをいかに表現するか、期待が高まる。
先ほど貴志のオーケストラの扱いはどこかマーラーを思い起こさせると書いたが、後半はそのマーラーの交響曲第1番「巨人」。繊細な自然の描写から終楽章の圧倒的なカタルシスまで、没入型のダイナミックな指揮で知られる藤岡が、若きマーラーの爆発的なエネルギーを、東京シティ・フィルをリードしてどう運んでいくかが最大の聴きどころだ。
戦前の日本人作曲家と後期ロマン派の交点を捉えた興味深い演奏会になりそうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2026年6月号より)
藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
すみだトリフォニーホール・特別シリーズ第2回
2026.9/25(金)19:00 すみだトリフォニーホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス 03-5624-4002
https://www.cityphil.jp

