
「お腹をかかえて笑いに来てください」
と言い切る。バリトンの大山大輔が構成・脚本・演出を手がけるJ.シュトラウスII世《こうもり》のスペシャル・ハイライト(日本語上演)。
「降り注ぐ音楽の美しさと、隙あらば笑わせにかかってくる舞台の熱量。とにかく元気になりたい方はみなさんおいでください!という感じです。
《こうもり》は楽しい作品ですが、オペレッタとしては硬派な音楽作りなんです。それをどうやわらかく楽しんでいただけるか。いつも以上にはりきって、台本を書いています」
フリーアナウンサーの朝岡聡が演じる台詞役のフロッシュは、ひとつ重要なアクセントになりそう。実は、今回の上演は原曲の第1幕と第2幕だけで構成するので、本来フロッシュの出番はない。なぜ登場するのかは見てのお楽しみだけれど、酔っ払いの看守というのは世を忍ぶ仮の姿で、正体は⋯⋯ということになるようだ。
「朝岡さんは、いっそ役者を名乗ればいいのにと思うぐらい。完全に役に入っていける。でもアナウンサーならではのナレーションも生かして、僕のファルケと朝岡さんのフロッシュでダブル狂言回しのようなことも考えています。これまであまり見たことがないものになると思います」
ただし、登場人物のキャラクター設定をいたずらに変えることはしない。
「そこを崩してしまうと古典ではなくなるので。もともとあるものをどうアレンジして楽しんでいただくか。われわれには、継承されてきたものを生き残らせる役目があると思うのです。演奏家が必死に技術を磨いているのはその最たる行為です」
出演は、ファルケ・大山大輔、ロザリンデ・市原愛、アデーレ・小林沙羅、オルロフスキー公爵・藤木大地、アルフレード・糸賀修平、アイゼンシュタイン・又吉秀樹、フランク・森雅史、フロッシュ・朝岡聡。
「それぞれの役に合った人選。小林沙羅さんはオペラ界随一の“役者”さんだし、又吉秀樹さんは全幅の信頼を寄せているエンターテイナー。ちょっと下心がありそうで、でも憎めないアイゼンシュタインにドンピシャです。
中規模のホールでの公演で、お客さまの熱が舞台と一体になって、笑いも拍手も起きやすい。いい環境だと思いますし、それに自然に反応できる、巧い役者が揃っています」
公演が行われるのは、若い音楽家のサポートに注力するローム ミュージック ファンデーションが主催する「ローム ミュージック フェスティバル」。大山もかつて、ロームの支援する小澤征爾音楽塾で、合唱メンバーやカヴァーキャストとして学んだが、若い頃からずっと、並行して芝居も経験してきた。
「オペラ歌手なのに芝居が巧い、と褒めてくれる人がいるのですが、芝居ができたうえで歌も歌えるのがオペラ歌手。音程もタイミングも決まっているという不自然で不自由な縛りの中で芝居をするのがオペラですが、そこにどうリアリティを見つけるか、その面白さをどうお客さまに浴びてもらえるか⋯⋯台本と演出の腕の見せどころかなと思っています」
演奏は東京交響楽団メンバーによる弦五部(五重奏)+フルート、クラリネットのアンサンブル。編曲とピアノに加藤昌則。上演時間は休憩を含めて約90分。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2025年3月号より)
ローム ミュージック フェスティバル2025
2025.4/26(土)、4/27(日) ロームシアター京都
【大山大輔 出演公演】
リレーコンサートA 喜歌劇《こうもり》スペシャル・ハイライト(日本語版)
4/26(土)13:30 ロームシアター京都 サウスホール
問:otonowa 075-252-8255
https://www.rmf.or.jp/jp/activity/rmfes/
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトをご確認ください。