オペラからジャズまで多彩なラインナップ
未来を見据えた静岡の音楽文化を担う場所として、1995年に開館した静岡音楽館AOI。現在は作曲家でピアニストの野平一郎を芸術監督に迎えて、若手や地元出身の音楽家の登用、現代の作品や静岡ならではのプログラミングを通じ、地元の文化の発展に寄与している。そんなAOIが、今年で開館20周年を迎える。その節目を飾るコンサート・シリーズ(第1〜3期)は、AOIを舞台にこれまで実践されてきた、しなやかな取り組みをぐっと凝縮。様々な層の聴衆に、幅広い音楽を提供する多層的な内容となっている。
幕開けを告げるのは、「オーケストラを聴こう」と題したステージ。マーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)が登場し、ノルウェー出身の気鋭ピアニスト、レイフ・オヴェ・アンスネスの弾き振りで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2・3・4番を一気に披露する。1997年にクラウディオ・アバドによって設立され、現在は20ヵ国45人の若手奏者で構成されるMCO。2012年、そのアーティスティック・パートナーに就任したアンスネスは、4年越しのプロジェクト『ベートーヴェンの旅』に取り組んでおり、当ステージはその一環。楽譜の裏の裏まで読み込んだような、アンスネスの描くベートーヴェン像に直接触れる、貴重な機会ともなろう。
そして、「ブラヴォー・アンコール! 間宮芳生の声Ⅰ」と題するステージでは、AOI初代芸術監督を務めた間宮が、AOIからの委嘱に応じて、2009年に初演したオペラ《ポポイ》が5年ぶりに再演される。倉橋由美子による同名小説を原作として、近未来を舞台とした魂の興隆の物語を縦糸に、日本の古来の芸能をはじめ、古今東西のあらゆる“声の技”を横糸に、独自の世界観が紡ぎ上げられる。SPAC(静岡県舞台芸術センター)芸術総監督の宮城聰による新演出、タイトルロールを演じるカウンターテナー上杉清仁、彼と心を通わせるヒロインのソプラノ吉川真澄ら、実力派キャストが寺嶋陸也の指揮のもとで作品へ新たな魂を授ける。
また、世界的ジャズ・ピアニストの小曽根真が、ウィットに富んだトークを交えながら進行する「子どものためのジャズ・ライヴ」も。さらに、「ブラジル音楽の世界」と題された公演では、ギターの笹子重治が率いるアコースティック・ユニット「ショーロ・クラブ」に、ギターの名手・福田進一と温かな歌声が魅力のヴォーカリストのアン・サリーが加わった豪華なステージが実現。ブラジル音楽界の巨人、アントニオ・カルロス・ジョビンとその周辺を特集する。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)
レイフ・オヴェ・アンスネス(指揮/ピアノ) マーラー・チェンバー・オーケストラ
5/14(木)19:00
小曽根真 子どものためのジャズ・ライヴ
6/6(土)15:00
オペラ《ポポイ》 6/28(日)15:00
ブラジル音楽の世界 7/25(土)15:00
静岡音楽館AOI
問:静岡音楽館AOI・インフォメーション054-251-2200
http://www.aoi.shizuoka-city.or.jp