東京フィルの2月定期に登場するのは、名誉音楽監督のチョン・ミョンフン。ベートーヴェンの「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲」、および交響曲第3番「英雄」をとりあげる。
ベートーヴェンの三重協奏曲は3人のソリストを必要とする珍しい作品だが、今回、ピアノを務めるのはチョン・ミョンフン自身。つまり弾き振りだ。三重協奏曲で弾き振りをする例はなかなかないと思うが、マエストロは1974年チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第2位を獲得したピアニストでもあり、室内楽でピアノを弾くこともしばしば。チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、チョン・ミョンファ(チェロ)とともに「チョン・トリオ」を組んで、この曲をレコーディングもしており、いわば自家薬籠中の物といえる。今回はヴァイオリンを前田妃奈が、チェロをマエストロ推薦のハン・ジェミンが務める。前田は2022年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールの優勝者。ハン・ジェミンは21年エネスク国際コンクールに史上最年少の15歳で優勝した新星。若い奏者たちの躍動も楽しみだ。
交響曲第3番「英雄」では、ベートーヴェンを音楽家としての原点とするマエストロが、確信に満ちた演奏を聴かせてくれることだろう。三重協奏曲と「英雄」は同時期の作品であり、ともに1804年の同日にパトロンのロプコヴィッツ侯爵邸で試演された作品でもある。中期ベートーヴェンの燃え上がるような創作力が伝わってくる好プログラムだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年1月号より)
チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1010回 オーチャード定期演奏会
2025.2/24(月・休)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第1011回 サントリー定期シリーズ
2025.2/25(火)19:00 サントリーホール
第167回 東京オペラシティ定期シリーズ
2025.2/26(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 1/7(火)発売
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
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