各地のオーケストラのゲスト首席やアンサンブルの一員として活躍中のチェリスト、金子鈴太郎が、1月のHakuju Hall「リクライニング・コンサート」に出演する。金子はハンガリー国立リスト音楽院に学び、帰国後の2003年から6年間大阪交響楽団で首席奏者を務め、現在はフリーで多彩な活動を展開する。
「桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コース在籍中、チャバ・オンツァイというすばらしい先生がいると聞き、ご縁あってハンガリーで教わることになりました。レッスンはもちろん、ブダペストの町で電車に乗って、友達と会話して、コーヒーを飲んで……ただ普通の生活をするという経験がすごく大きくて、結局4年いました。大阪響は帰国後すぐにオーディションがあり、出身は栃木なので、ある意味また留学する気持ちで臨みました(笑)」
大阪時代に出会った指揮者・ヴィオラ奏者の大山平一郎に「室内楽をやりませんか?」と誘われたことから、大山の主宰する「Music Dialogue」をはじめ、アンサンブル活動を深め続ける金子。そのひとつの成果が示される本公演、共演ピアニストは全幅の信頼を置く名手、岡田奏。
「岡田さんは自由に音楽を作り、でも“僕の力を120%”自然に出させてくれます。演奏しながらアイディアが湧き、それで行こうと音を出した瞬間には、彼女は既に全部わかって演奏してくれる。相性が良いというか、もう神様みたいな人というか(笑)」
約1時間のプログラムは、ショスタコーヴィチの「チェロ・ソナタ」を柱にしながら、ドヴォルザーク「森の静けさ」で終える、意外性のある並びに。
「夏に岡田さんと共演したショスタコーヴィチがもう絶品で。もっとやりたいということで、まずこれが決まりました。プログラム全体はハイドンで始めてショスタコーヴィチ、そこからリラックスしていく流れです。
ハイドン『ディヴェルティメント』はスッと音楽に入って快活に終わる曲で、コンサートの1曲目にふさわしい。美しさも緊張感もあるショスタコーヴィチの大作の後には、シチェドリンの『カドリール』という楽しい小品や、人気作のピアソラ『ル・グラン・タンゴ』を。最後の『森の静けさ』も大好きな曲です。聴く人が頭の中で自由に景色を描ける曲で、“ゆったりとした時間を”という『リクライニング』のテーマをドヴォルザークが知っていたのでは、というくらいピッタリだと思います」
「客席で聴いてもいいし、演奏者にとってもいい、すてきなホール」というHakuju Hallで、チェロとアンサンブルの喜びを金子が伝えてくれる。
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年1月号より)
第176回 リクライニング・コンサート 金子鈴太郎(チェロ) & 岡田 奏(ピアノ)
2025.1/16(木)15:00 19:30 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp