伊藤悠貴、阪田知樹が第27回 ホテルオークラ音楽賞を受賞

 ホテルオークラ音楽賞の第27回受賞者が発表され、2025年度の受賞者に伊藤悠貴(チェロ)と阪田知樹(ピアノ)が選出された。同賞は、株式会社ホテルオークラ東京が1996年に創設したもので、活躍目覚ましい若手の音楽家の支援・育成を目的としている。二人には奨励金として各100万円と、副賞としてホテルのペア宿泊券などが贈られる。選考委員はチェリストの堤剛、指揮者の大友直人、音楽評論家の寺西基之らが務めた。

伊藤悠貴 ©Ryusei Kojima

 伊藤悠貴は、卓越した演奏技術に加え、作品研究を通じて作曲家の本質に迫る姿勢を特徴とする音楽家。特にラフマニノフを研究の中心に据え、『ラフマニノフ考―チェロ奏者から見たその音楽像―』を上梓している。そうした学術的な探究心を自らの演奏表現に昇華させている点が高く評価され、今後さらにその芸術性を深化させ、大成していくことへの期待を込めての受賞となった。

阪田知樹 ©Ayustet

 一方、阪田知樹は、2016年にフランツ・リスト国際ピアノコンクールで優勝するなど、若くして大きな注目を集めてきた。その後も貪欲にレパートリーの幅を広げ、国内外のオーケストラからもソリストとして招かれるなど、人気と実力を兼ね備えたピアニストとして存在感を増している。近年は、演奏のみならず、作曲や指揮にも意欲的に取り組み、芸術家としての可能性を広げている点も評価された。

 授賞式と記念演奏会は3月23日、同ホテル内で行われる。

選評:寺西基之(音楽評論家)

伊藤悠貴
伊藤悠貴さんはブラームス国際コンクールやウィンザー祝祭国際弦楽コンクールで優勝、イギリスのウィンザー城でフィルハーモニア管弦楽団との共演でデビューして以降、国際的な活躍の場を広げてきた。その活動で特に評価したいのは、華々しいスター路線に走るのではなく、独自の道を掘り下げる地道な姿勢を貫いている点である。そのことは彼の奏でる音楽にもはっきりと現れていて、優れた演奏技術を持ちながらもそれをひけらかすことなく、作品そのものの美質をじっくりと追求することを重んじている。一般にあまり演奏されることのないイギリスのチェロ作品の紹介に努めていることや、ラフマニノフに関してチェロ作品だけでなく歌曲を中心とする様々な作品を研究して作曲家の本質に迫るなど、学術的な探求心を自らの演奏に生かしていることも、そうした彼の姿勢の現れといえるだろう。今後ますますの大成をめざして自らの道を究め続けていくことを期待したい。

阪田知樹
阪田知樹さんはブダペストのフランツ・リスト国際ピアノコンクールでの優勝やエリザベート王妃国際コンクール第4位など、名だたるコンクールで輝かしい成績を収めて早くから類い稀な才能が注目されたが、その後さらに自身のピアニズムを進化させて、今や若くして日本のピアノ界を牽引する存在となっている。いかなる難曲でも完璧にこなす圧倒的な技巧、多彩なパレットから生れる表現力の幅の広さはひときわ異彩を放っていて、“現代のヴィルトゥオーゾ”と呼ぶに相応しいものがあるが、その演奏は決して恣意的なものにならず、作曲家や作品に対する深い洞察と演奏スタイルや奏法についての探求に裏打ちされているので、きわめて強い説得力を持っている。最近はピアノ演奏にとどまらず、作曲や指揮の活動にも積極的に乗り出すなど、表現者としての自らの領域をさらに大きく拡大しつつあり、これから彼が自身の可能性をどこまで広げていくのか楽しみでならない。