小泉和裕&都響が描き出すシェーンベルク初期の濃密な音世界

小泉和裕 ©Rikimaru Hotta

 2024年は新ウィーン楽派の作曲家シェーンベルクの生誕150年。無調や12音技法を用いたことで、難解なイメージで語られがちだが、その音楽はどれも魅力的で、歌曲やピアノ曲から大編成の管弦楽曲まで、独学の天才は、どの作品でも驚くべき才能を発揮した。東京都交響楽団の11月定期演奏会Bシリーズでは、終身名誉指揮者の小泉和裕が、シェーンベルク初期の大作、交響詩「ペレアスとメリザンド」(1902〜03)を取り上げる。後期ロマン派のスタイルで書かれ、世紀末ウィーンの香りが漂う濃密な作品だ。

 ベルギーの詩人メーテルリンクの同名の戯曲は、同時代の多くの作曲家の心を揺さぶった。宿命の恋、禁断の愛は、シェーンベルクの「浄夜」にも通じる題材である。単一楽章の交響詩は、交響曲の4つの楽章の要素を組み込み、ライトモティーフを導入。大胆な和声と対位法的書法が際立ち、4管編成のオーケストラは、波打つように揺れ動き、聴き手を陶酔させる。その耽美的な世界を、楽譜と真摯に向き合う厳格なタクトの小泉のもと、マーラーやR.シュトラウスでの快演が続く都響がどのように描くのか楽しみだ。

 前半は、小泉が愛する名曲、モーツァルトのディヴェルティメント K.334。ザルツブルク期の最後を飾る傑作は、有名なメヌエットなど、晴れやかで優美な音楽が心地よい。小泉の指揮で、都響が誇る弦楽器群から豊かでしっとりとした響きが引き出され、音楽に浸る喜びを存分に感じさせてくれるだろう。深まる秋にじっくりと味わいたいプログラムだ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2024年11月号より)

小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団
第1011回 定期演奏会Bシリーズ
2024.11/20(水)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp