ノット&東響が、ラヴェル、デュリュフレでみせる色彩豊かなオーケストラサウンド

左より:ジョナサン・ノット ©N.Ikegami/中島郁子/青山 貴/マルティン・フレスト ©Sony Music Entertainment

 東響11月定期は音楽監督のジョナサン・ノットがフランスものを中心とするプログラムを取り上げる。メインはモーリス・デュリュフレの「レクイエム」だ。オルガニストとしても活躍したデュリュフレは第二次大戦終戦の後、同じくオルガニストだったフォーレの「レクイエム」を範にして本作に取り掛かった。グレゴリオ聖歌を引用しながらハイセンスな和声や効果的なオーケストレーションを施すことで、フォーレ以降のこのジャンルの最美の作と言うべき仕上がりとなった。東響と東響コーラスは18年前に本作をレコーディングしているが、今回はノットと共に更なる高みを目指す。中島郁子(メゾソプラノ)、青山貴(バリトン)と独唱陣も強力だ。

 プログラム前半はノットらしい趣向を凝らしたエキゾティックな冒険が楽しめそうだ。まずはラヴェルの「スペイン狂詩曲」。ラヴェルの母親はスペインのバスク地方の出身で、彼自身も母親を通じてスペイン民謡に親しんでいた。本作にはそんな異国趣味が存分に発揮されている。

 さらにスイスの作曲家ミカエル・ジャレルのクラリネット協奏曲「Passages」の日本初演が続く。オーケストラが描き出す宇宙空間のような広がりの中を、クラリネットがスリリングに遊泳していく。独奏のマルティン・フレストはクラリネット界のスター奏者で、近年は指揮でも才能を発揮している。昨年10月にノットが同じく音楽監督を務めるスイス・ロマンド管と本作を世界初演しており、今回はさらに洗練された演奏を聴かせてくれるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年11月号より)

ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団
第726回 定期演奏会
2024.11/9(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp

ミューザ川崎シンフォニーホール & 東京交響楽団 名曲全集 第201回
2024.11/10(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200
https://www.kawasaki-sym-hall.jp