N響の2025-26シーズン(2025年9月〜26年6月)ラインナップ速報が10月4日、発表された。NHKホールを会場とするAプロ(土、日)とCプロ(金、土)、サントリーホールを会場とするBプロ(木、金)の3本立ては例年通り。
9月13日、4季目を迎える首席指揮者ファビオ・ルイージのタクトでシーズンがスタート。ルイージは折にふれてフランツ・シュミットの作品を取り上げてきただが、交響曲第4番を開幕公演のプログラムに持ってきたところからも、この作曲家への想い入れの深さが窺われる(2025.9/13, 9/14)。ルイージは計7演目14公演に登壇するが、幅広いレパートリーを誇るマエストロらしく、12月の藤倉大の新作初演(N響委嘱作品)のほか、ツェムリンスキー「人魚姫」、サン=サーンス「オルガンつき」、ニルセン「不滅」、ブルックナー第9番、マーラー第5番など非常に多岐にわたるプログラムが組まれている。12月のCプロでは、10月のショパン国際ピアノコンクールの覇者がいち早く登場するのも話題を呼びそう(12/12, 12/13)。
シーズンの最大の話題は、25年11月に予定されている名誉音楽監督シャルル・デュトワの定期公演への帰還かもしれない。これまで40年近くにわたって300回以上の共演を重ねてきた。今月30日、NHK音楽祭で7年ぶりの共演を果たすことになるが、ついに来季、定期公演の指揮台にも復帰を果たすことになる。オンド・マルトノも登場するメシアンの合唱曲「神の現存の3つの小典礼」、全曲を通しての実演は意外に少ないホルストの組曲「惑星」と、共に女声合唱をともなうAプロは必聴(11/8, 11/9)。もう一つは、生誕150年にあたるラヴェル三昧のCプロ。「クープランの墓」、「ダフニスとクロエ」(全曲)など、まさに「音の魔術師」の異名をとるマエストロの面目躍如たる選曲だけに、オーケストラファンの期待も大きいだろう(11/14, 11/15)。
桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットは、今シーズンもまもなく来日するが、2025-26シーズンにも3演目6公演が予定されている。公演時には98歳を迎えているという事実にあらためて驚きを禁じ得ないが、シベリウスの交響曲第5番など北欧プロ(10/9, 10/10)、メンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」ほか(10/18, 10/19)、オール・ブラームス・プロ(10/24, 10/25)と、未だ衰えぬ音楽への意欲を感じさせる演目だ。楽団と蜜月が続くトゥガン・ソヒエフは、2026年1月に登場。プロコフィエフの交響曲第5番(26.1/29, 1/30)、ストラヴィンスキー「火の鳥」(1919年版)(1/23, 1/24)などロシアものや、マーラー「悲劇的」(1/17, 1/18)で、まさに脂の乗ったマエストロのタクトを愉しむことができそうだ。
客演陣では、フィリップ・ジョルダン、ヤクブ・フルシャ、ミヒャエル・ザンデルリンク、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンなどの実力者たちも登場、そのほかロイヤル・ストックホルム・フィルのシェフを務める若手ライアン・バンクロフトなどフレッシュな顔ぶれも。また、山田和樹が、作曲家でもあった指揮者・山田一雄の小交響詩や1907年生まれの夭折の作曲家、須賀田礒太郎の知られざる作品を取り上げる公演も興味深い(2026.5/14, 5/15)。
ソリスト陣も、ドイツ・グラモフォンからのデビューで話題をさらった新星マリア・ドゥエニャス、おなじみレオニダス・カヴァコスなどヴァイオリンの名手たちや、巨匠エマニュエル・アックス、レイフ・オヴェ・アンスネスら世界的なピアニストたち、そして反田恭平(ピアノ)、HIMARI(ヴァイオリン)、上野通明(チェロ)といった日本の人気アーティストも登場。2026年の楽団創立100年に向けて、着実に楽団のポテンシャルを高めていくシーズンとなる。
NHK交響楽団
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