音楽監督ジョナサン・ノットとのラストシーズン
東京交響楽団は10月4日、2025/26年シーズンラインナップ(2025年4月~26年3月)を発表した。定期演奏会は全21公演。サントリーホール(10公演)、本拠地ミューザ川崎シンフォニーホール(5公演)、東京オペラシティ コンサートホール(6公演)の3会場で行われる。
2025/26シーズンをもって音楽監督を退任することが発表されているジョナサン・ノット。東響との12季目となる最後のシーズンに向けて、パンフレットに以下のコメントを寄稿している。
私の指揮する全ての公演を、“Song(歌)”という一貫したコンセプトでプログラミングしました。人は、喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、全ての感情を「歌」にのせ奏でてきました。また、小川のせせらぎ、小鳥のさえずり、荒れ狂う風雨、大河の流れや大海原の波、夜空に輝く星にいたるまで、自然界のあらゆる情景をも朗々と歌い上げてきました。そして2025年シーズンは、第二次世界大戦が終焉を告げて80年の節目となる年でもあります。我々が忘れてはならないことは、常に、生きるということはどういう意味を持つのか、平和とは何か、ということを自問自答し続けることでもあると思います。
私と東京交響楽団の音楽の旅は、マーラーの交響曲第9番から始まり、同じ曲で終わりを迎えます。始まりと終わりが繋がり、一つのループとなって、永遠に続く旅の様にも感じられます。そんな万感の思いを込めて私の“Song”をお届けしたいと思います。
ノットは8プログラム全13公演で登壇。4月のシーズンオープニングではブルックナーの交響曲第8番、7月にはブリテン「戦争レクイエム」、そして9月の「マタイ受難曲」と前半だけでも3つの大曲が取り上げられ、ラストシーズンにかける並々ならぬ思いが伝わってくる。
客演陣では、6月に世界的チェリスト、マリオ・ブルネロが登場。今回は独奏チェロだけでなく指揮も務める。披露するのはハイドンの交響曲第100番「軍隊」、シューマンの協奏曲(ショスタコーヴィチ編)に加え、近年再評価の進む20世紀ポーランドの作曲家ヴァインベルク作品というプログラムで、東響とどのようなサウンドを創り上げるのか期待したい。
10月は、フィンランドのスザンナ・マルッキ。ヘルシンキ・フィルの首席指揮者、ロサンゼルス・フィルの首席客演指揮者、アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務めた経歴を持ち、ベルリン・フィルにも繰り返し客演している。東響では自然がテーマの2曲、ベートーヴェン「田園」とストラヴィンスキー「春の祭典」を指揮する。
今年、指揮者生活60年というメモリアルイヤーを迎えた桂冠指揮者・秋山和慶は、2025年がデビュー50年のヴァイオリニスト大谷康子と共演(12/13)。40年間にわたって東響の音楽監督・常任指揮者を務め、現在は桂冠指揮者の任にある秋山と、1995年から2016年までコンサートマスターとして同楽団を支えた大谷が、ジャズトランペットの巨匠ウィントン・マルサリスのヴァイオリン協奏曲に挑む。
近年日本人作曲家の紹介に力を注ぐ正指揮者・原田慶太楼は12月に登壇。1954年、東響が初演した芥川也寸志の交響曲第1番、小林愛実をソリストに迎えるグリーグのピアノ協奏曲などを取り上げる。
ノットとともに躍進を続けてきた東京交響楽団。これまで多くの時間を共有してきた彼らが最後にどのような花を咲かせるのか、注目のシーズンになる。
東京交響楽団
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