オーボエ界の頂を極めた吹き手のひとりがフランソワ・ルルーだ。バイエルン放送響の首席奏者を経てミュンヘン音大教授。レ・ヴァン・フランセのメンバーとして来日の機会も多く、アンサンブルの中で発揮する存在感と音楽の牽引力の強さは圧巻というほかない。ちなみに奥さんはヴァイオリン界が誇る閨秀ソロイストのリサ・バティアシュヴィリ。羨ましい音楽家人生!
そのルルーは指揮者としても気を吐いている。すでにオスロ・フィルやバーミンガム市響など錚々たる楽団から招聘を受け、客演歴も長いスコットランド室内管と2020年にリリースしたCDでは、ビゼーの交響曲 ハ長調や「カルメン」組曲で才気煥発な音楽作りを披露。25年の秋にはカンマーアカデミー・ポツダムの芸術監督に就任。昇り竜の勢いすら感じる。
22年11月に初共演を果たした日本フィルの指揮台に彼が帰ってくる。プログラムは絶好の内容だ。ラフの「シンフォニエッタ」は木管楽器とホルン各2本ずつの10人編成。その第1オーボエの椅子に座ったルルーが合奏を仕切りながら、演奏仲間と聴衆の両方を幸福感で結ぶという、確信に満ちた行為にいそしむ姿が目に浮かぶ。彼一流の美音と濃密な歌心を堪能させるのは、メンデルスゾーンの「無言歌集」(抜粋)のオーボエと弦楽合奏版(A.タルクマン編)。そしてメンデルスゾーンは“指揮者ルルー”が得意とする作曲家だけに、交響曲第3番「スコットランド」も通り一遍の域を超えた解釈を得て鳴り響くことだろう。
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2024年10月号より)
フランソワ・ルルー(指揮/オーボエ) 日本フィルハーモニー交響楽団
第765回 東京定期演奏会
2024.11/1(金)19:00、11/2(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp