今回はさらに“一歩踏み込んだ”選曲で
音楽本位で堅実にスコアに向かい、オーケストラから職人気質の芯の通った響きをつかみ出す——ヤノフスキはドイツではかねてから評価の高い指揮者だった。そのサウンドは細部まで彫琢されて引き締まり、流れに無駄がない。その上、音楽が自然に呼吸しているから、コンサートだけではなくオペラも振れる。
そんなヤノフスキの実力が、日本でもようやく知られるようになってきた。登板の機会も増え、至芸の精髄が明らかになりつつある。しかしその全貌を一望したいなら、彼が鍛えてきたオーケストラ、ベルリン放送響との共演を聴くのが近道だ。2002年から始まった“ヤノフスキ時代”にアンサンブルはいっそう鍛えこまれ、その精神はいまや楽団員の血肉となっている。
11年の来日時に披露した、コンパクトにまとまりながらも力強さをうちに秘めたベートーヴェンは、彼らの蜜月を聴くものに実感させた。今回は巨匠の万全な統率のもと、一歩踏み込んだ選曲になっているのが頼もしい。3月16日はブラームスの交響曲第1番を軸に、ウェーバー《オベロン》序曲とシベリウスのヴァイオリン協奏曲が並ぶ。フランク・ペーター・ツィンマーマンもキレのいい独奏を聴かせてくれるはずだ。
18日はブルックナーの交響曲第8番。誰しもが納得するブルックナーを創るのは、本当に難しい。そこには経験に裏打ちされた合理的な解釈と、それを実現できる力をもったオーケストラとの緊密な意志疎通、そして長丁場を乗り切る体力や緊張感が必要となるからだ。最高の状態にある両者が、満を持して披露する一本勝負に期待したい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)
3/16(月)19:00、3/18(水)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
他公演
3/15(日)ハーモニーホールふくい 問:0776-38-8282
3/20(金)静岡グランシップ 問:054-289-9000
3/21(土・祝)兵庫県立芸術文化センター 問:0798-68-0255
3/22(日)周南市文化会館 問:0834-22-8787
3/23(月)・3/24(火)武蔵野市民文化会館 問:0422-54-2011