小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXX
モーツァルト:歌劇《コジ・ファン・トゥッテ》

世界的音楽家と選ばれし若者たちの実り多き融合

 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトが今年20回目を迎える。ローム株式会社の佐藤研一郎社長(当時)と世界的指揮者・小澤征爾が、2000年に立ち上げたこの教育プロジェクトは、オーディションで選ばれた若い音楽家たちによるオーケストラ(カヴァーキャストや合唱にも多くの若手が参加)が、オペラ作品を題材に、時間をたっぷりとかけたリハーサルで演奏を仕上げ、世界の第一線で活躍する歌手や指揮者・演出家と共にステージを創り上げていくという、世界でも稀な音楽創造の場。塾生からソリストやオーケストラのコンサートマスター、首席奏者になった者も多く、着実に成果をあげている。

左より:小澤征爾 ©Shintaro Shiratori/ディエゴ・マテウス/デイヴィッド・ニース

 今回の演目は、モーツァルト4大オペラの一角をなす名作《コジ・ファン・トゥッテ》。2人の士官と許嫁姉妹の恋心の変転を、円熟の天才が軽妙に描いた愉しい音楽だ。なお本作は1969年にザルツブルクで小澤が初めて振ったオペラ。その指揮は恩師カラヤンの勧めであり、また2001年=2回目の当音楽塾で取り上げられた、“世界のオザワ”とゆかりの深い作品でもある。

 指揮はベネズエラの「エル・システマ」出身のディエゴ・マテウス。2011年にサイトウ・キネン・オーケストラの指揮者として松本に招かれて以来、3回にわたって同楽団を指揮し、当音楽塾では、22年の《こうもり》、23年の《ラ・ボエーム》を担当しただけでなく、首席指揮者にも指名された、小澤の信頼が厚い俊才である。彼は世界的な活躍を続け、本公演後には《カルメン》でメトロポリタン・オペラにデビューするなど、キャリアも上り調子。昨年の《ラ・ボエーム》での精彩に富んだ音楽作りからも今回への期待は大きい。

上段左より:サマンサ・クラーク ©Benjamin Ealovega/
リハブ・シャイエブ ©Fay Fox/
ルネ・バルベラ ©Anna Barbera
下段左より:アレッシオ・アルドゥイーニ/バルバラ・フリットリ/ロッド・ギルフリー

 歌手陣も素晴らしい。姉フィオルディリージは、リリックな声と抜群のテクニックを持つ、同役も十八番のソプラノ、サマンサ・クラーク。妹ドラベッラは、艶やかな声の持ち主で、同役はじめモーツァルトを得意とするメゾソプラノ、リハブ・シャイエブ。士官フェランドは、技巧鮮やかなテノール、ルネ・バルベラ。彼は、新国立劇場の《セビリアの理髪師》アルマヴィーヴァ伯爵と《ラ・チェネレントラ》ドン・ラミーロ役でも喝采を浴びている。同じくグリエルモは、イタリア出身のセクシーなバリトン、アレッシオ・アルドゥイーニ。こうした世界の著名歌劇場に出演を重ねる俊英歌手たちに加えて、女中デスピーナに不世出のスター・ソプラノ、バルバラ・フリットリ、哲学者ドン・アルフォンソにミュージカル等の経験も豊富なバリトン、ロッド・ギルフリーと、進行の肝となる両役にベテランを配した布陣は盤石と言っていい。実力派のモーツァルト歌手が揃った今回は、彼らの歌唱を聴くだけでも足を運ぶ甲斐があるし、《コジ》は「アンサンブル・オペラ」の代表格だけに、数々の重唱がまたとない聴きものとなる。

 世界トップ級の歌手陣の演唱と、小澤の薫陶を受けた講師陣のもとで練習を重ねた若いオーケストラのフレッシュで一体感のある演奏の融合や相乗効果が、他では味わえない本プロジェクトの魅力。お馴染みデイヴィッド・ニースのお洒落な演出で展開されるモーツァルトの機微を、ぜひ体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年2月号より)

【出演者変更】
当公演に出演を予定していたフェランド役のルネ・バルベラは、健康上の理由により出演ができなくなりました。
代わりまして、ピエトロ・アダイーニが出演いたします。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(2/22主催者発表)

2024.3/15(金)18:30、3/17(日)15:00 ロームシアター京都
問:ロームシアター京都チケットカウンター075-746-3201
2024.3/20(水・祝)15:00 神奈川県民ホール
問:チケットかながわ0570-015-415
2024.3/23(土)15:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://ozawa-musicacademy.com