青柳 晋(ピアノ)

17回に及んだシリーズ完結篇は、ロ短調作品を集めて

©Ayane Shindo

 青柳晋が2006年に開始した自主企画シリーズ「リストのいる部屋」が12月22日で第17回を迎え、最終回となる。リストをホスト役に関連性のあるさまざまな作曲家の作品を組み合わせ、凝った選曲で続けてきたシリーズ。ソロのみならず2台ピアノやヴァイオリン作品も加わり、多彩な内容となった。

 「もっともリラックスでき、大好きなリストを中心に凝りに凝ったプログラムで構成してきました。今後は別の視点で新たな可能性を追求し、より幅広い作品を弾いていきたい」

 こう語る青柳にとって1回1回が思い出深く、リストの本質に触れることができ、さらに毎回多くのことを学べたという。

 「第1回は大好きなヤナーチェクを最初と最後に置いてアミューズのような位置づけとし、リストの巡礼の年第2年『イタリア』をメインに組みました。1988年にアメリカで映画化されたミラン・クンデラ原作の『存在の耐えられない軽さ』では、全編にヤナーチェクの音楽が使われているのですが、その最後のシーンで流れる曲をリサイタルでも最後に置きました。大変だったのは、2016年のフランクとの組み合わせと、2021年のベートーヴェン『ハンマークラヴィーア』ソナタ。2018年と19年はベートーヴェンとの組み合わせで連作となっています。2017年はショパン、リストと交互に組み合わせました。この回は父親が亡くなった年ですので、印象深いですね」

 人生を浮き彫りにし、自身の足跡をたどってきた17回。最後はやはりリストのロ短調ソナタで締めくくり、他にもロ短調の作品が多く並ぶ。

 「ロ短調の作品でも、モーツァルト、シューマン、フォーレでは、ひとつずつ異なったストーリーが内包されています。この調性による曲は傑作が多い。リストのソナタは単一楽章の重量級の作品ですが、非常にシンプルでひとつのテーマに沿って書かれています。私は最後の部分で悪魔がニヤッと笑う形で演奏したい。天使とのせめぎ合いもありますが、最後の1音ですべてが逆転するような形にもっていきたいのです。ブラームスの『4つの小品』作品119は、第1番がロ短調で始まります。ブラームスはベートーヴェンへの敬愛とクララへの思慕があまりにも強く、辛い人生を送ったと思いますが、この作品は3度ずつ下降する旋律が非常に特徴的であり、ブラームスの諦観が表現されているようで心に強く響いてきます」

 演奏、指導、コンクールの審査員など多忙を極めるが、体験フェチで、時間が許せばダイビングやパラグライダーをしたいとか。そんな人間味あふれる彼のリストは聴き逃せない。
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2023年12月号より)

青柳 晋 「リストのいる部屋」Vol.17 最終回 in h-moll
2023.12/22(金)19:00 Hakuju Hall
問:ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530 
https://susumusic.jp