山岸ルツ子(ピアノ)

ロマンティシズムの系譜を辿る

(c)武藤 章

 ピアニストの山岸ルツ子は、桐朋学園大学音楽学部で学び、19歳よりバンクーバーに留学。1997年からは伝説的なヴィルトゥオーゾ・ピアニスト、ラザール・ベルマンに師事し、最後の弟子としてフィレンツェで研鑽を重ねた。国際的に活躍を続ける山岸が、自身のピアニズムを存分に発揮できるプログラムを引っ提げてサントリーホール ブルーローズでリサイタルを行う。“ロマンティシズム”をテーマに、ロマン派を代表する作曲家たちの作品が集められている。

 「“ロマン”の語源についても想いを馳せながら、ロマンティシズムの凝縮した作品を選びました。ローマ時代の末期、文語としての古典ラテン語と口語としての俗ラテン語の差が大きく広がり、庶民の間に広がった口語による文学作品が『ロマンス』と呼ばれるようになりましたが、ロマン派の音楽も、市民のために生まれたものです。多くの人々に開かれたロマン派の音楽を改めて意識していただけるような楽曲を並べています」

 リサイタルはスカルラッティのソナタで幕を開け、ショパンからリストへと繋がっていく。この並びにも山岸のこだわりが詰まっている。

 「スカルラッティはバロック時代の作曲家ですが、彼は555曲ものソナタを書き、ピアノの演奏技術を大きく進化させました。さらに彼が指導していたスペイン王女のマリア・バルバラとともにピアノという楽器そのものの発展にも大きく貢献しています。彼の音楽、功績はショパンやリストの時代につながるものと考え、最初に演奏することにしました」

 後半では、師であるベルマンとの思い出も多く詰まったリストの作品が集められ、山岸のピアニズムと作品に対する真摯な姿勢が感じられるプログラムとなっている。

 「『エステ荘の噴水』は彼が困難の中で新境地を開いた作品です。後半はどうしてもこれで始めたいと思いました。シューマンの歌曲を編曲した『献呈』は、リストとシューマンという同時代を生き、互いを尊敬しあっていた彼らの関係性にロマンを感じ選んでいます。『ラ・カンパネラ』はこれまで節目で演奏してきたもので、大変に難しい曲ですが、ベルマン先生から“その困難を乗り越えて自分の鐘を鳴らしなさい”と教えていただいた大切な作品です。『ハンガリー狂詩曲』はリストという作曲家の多面性が詰まっており、故郷に対する想いやエンターテインメント性など、あらゆるものを感じていただける楽曲です。私なりに構築してきた“リスト像”を皆様にお届けできるように演奏したいです」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2023年11月号より)

山岸ルツ子 ピアノ・リサイタル ロマンティシズム ~ピアノ芸術の粋~
2023.11/30(木)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp