神奈川フィル2024-2025シーズン
コンサートプログラム発表記者会見

左:上野孝 神奈川フィルハーモニー管弦楽団理事長 右:沼尻竜典 同楽団音楽監督

 神奈川フィルハーモニー管弦楽団が10月16日、横浜市内で記者会見を行い、2024-2025シーズンのプログラムを発表した。登壇者は同楽団音楽監督の沼尻竜典のほか、理事長の上野孝、専務理事の櫻井龍一、音楽主幹の榊原徹の4名。
 来シーズンは今季同様、横浜みなとみらいホールで行う全10回の「みなとみらいシリーズ定期演奏会」、オーケストラ・超名曲集と銘打ち神奈川県民ホールを会場とする「県民名曲シリーズ」(全3回)、神奈川県立音楽堂での「音楽堂シリーズ」(全3回)の全3シリーズ計16公演を開催。
 今年6月、R.シュトラウス《サロメ》の上演で好評を博したセミステージ形式のオペラ公演「Dramatic Series」は来季も継続。團伊玖磨の歌劇《夕鶴》を作曲者ゆかりの地・横須賀で上演する。

 沼尻竜典は音楽監督就任から3季目となる新シーズンに向けて以下のとおり意気込みを語った。
「ついこの間就任披露演奏会を行ったと思ったら、もう2年近く経ってしまいました。神奈川フィルは若い方がたくさん加入し、伸び盛りの時期を迎えています。先日の《サロメ》では、神奈川フィルにこれほどオペラへの適性があることに驚きました。《サロメ》のすぐ後の公演で演奏した同じR.シュトラウスの『英雄の生涯』にもオペラを経験した効果が出ていました。ウィーン・フィルは1年中オペラで音楽的な感性を養っているということもあるので、オーケストラのフレキシビリティを磨く意味も込めてオペラ公演はこれからも続けていきたいと思っています」

 新シーズンの「Dramatic Series」はよこすか芸術劇場を舞台に、同楽団の桂冠芸術顧問であり生前、同地に居を構えた作曲家の團伊玖磨の《夕鶴》を取り上げる。公演当日の2024年4月7日は作曲者生誕100年の記念日にあたる。
「生前の團さんが『横須賀行ってごらんよ。ミラノのスカラ座が建ってるよ』と仰っていました。ご自慢のホールだったと思います。《夕鶴》は日本での上演回数が800回を超える作品。私は残念ながら演奏したことがなかったので、今回ぜひやりたいということで指揮することになりました」

左より:上野孝、沼尻竜典、榊原徹 神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽主幹

 沼尻は、「みなとみらいシリーズ定期演奏会」に計3回登場。第394回(24.4/20)では、生誕200年となるブルックナーの交響曲第5番(ノヴァーク版)を取り上げる。
「ブルックナーは指揮者にとって避けては通れない作品で非常に宗教的な音楽です。以前、ブルックナーが住んでいたリンツの教会に行って、彼のオルガンに触らせてもらったことがあります。非常に鍵盤の重いオルガンで、音も重く、ブルックナーサウンドを感じました。私は国内ではあまり作品を演奏していませんが、そういった経験を活かしたいと思っています」

 その他、ヴェルディのレクイエムを指揮する第400回記念(24.11/16)、今年4月のシーズンオープニングで客席を沸かせた交響曲8番に続き取り上げるショスタコーヴィチの交響曲第10番を演奏する第402回(2025.2/15)でタクトを執る。

 沼尻は「県民名曲シリーズ」には2回、「音楽堂シリーズ」には1回登壇。目を引くのは「音楽堂シリーズ」第30回(24.7/6)で、師である三善晃の「弦の星たち」(ヴァイオリン:石田泰尚)などを披露する。
「『弦の星たち』は桐朋学園の海外公演のために三善先生が書いた作品。星は学生たちのことで、初演の独奏ヴァイオリンは確か諏訪内晶子さんだったと思います。弦楽器だけの編成で非常に密度が濃く、弾くのはものすごく難しいのですが、今の神奈川フィルなら問題ないと思います」

 同楽団は定期会員の獲得にも力を入れており、特典としてチケットの最優先予約や割引が受けられる以外に、終演後に楽員と交流できる「シーズン開幕乾杯式」や「定期公演アフター交流会」、「ファン感謝コンサート」などの限定イベントも実施予定。演奏以外でもオーケストラを身近に感じられる内容となっている。

 今年放送されたドラマ「リバーサル・オーケストラ」への出演が話題となったことも記憶に新しい神奈川フィル。注目が高まる中、今後の活躍から目が離せない。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
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