ミロシュ(ギター)

ギターは、美しくロマンティックな楽器です

©Lars Borges/Mercury Classics
©Lars Borges/Mercury Classics
 美しく明瞭なサウンド、しなやかな音楽性、さらに、そのイケメンぶりでも話題のギタリストのミロシュが、この12月にリサイタルやオーケストラ共演を通じ、その魅力を披露する。
「様々な感情や性格を、演奏を通じて感じてもらいたい。ギターの魅力を凝縮したプログラムなので、自由な気持ちで聴いていただけたらと思います。私は、常にパワフルで直接的な音を求めています。ギターはポリフォニックな楽器ですが、旋律と和音を明確にすれば、たとえ大空間でも、自分の目指す音色を届けることができます」
 リサイタルでは、ファリャやグラナドスなどスペイン作品を中心に、現代イタリアのドメニコーニによる「コユンババ」やバッハの「シャコンヌ」を添えたプログラムを組んだ。
「ファリャは、オーケストラ作品からギター・ソロへの編曲も。一方で、『コユンババ』のようなラテン音楽も、楽しく弾けるので大好きです。バッハは演奏を重ねるごとに、新たな発見がある。私にとって常に挑戦です」
 「共にレパートリーの中核」と位置付ける、ロドリーゴの「アランフエス協奏曲」と「ある貴紳のための幻想曲」。この夏に2曲を核とした、3枚目のアルバムを発表したばかりだが、今回の来日でも、ヨルダン・カムツァロフ指揮の東京フィルと共に両曲を披露する。
「オーケストラとの共演は、私に霊感を授け、新たな経験をさせてくれます。音楽の幅が広がり、新たな要素が追加されるので、いつもわくわくします」
 8歳の時にギターを始めた。
「新たに楽器に取り組もうと始めたのですが、音楽学校で退屈してしまい、その頃父からアンドレス・セゴビア(スペインの名ギタリスト)のレコードを手渡され、一気にこの楽器の虜に。この時、自分に走った衝撃は、今でも鮮やかに思い出せます。以来、セゴビアは神様のような存在ですし、この思いは永遠に続くでしょう」
 故国モンテネグロは少年時代、内戦の真っただ中にあった。
「過酷な状況下、両親は私が音楽の世界に存在できるようにしてくれました。今こうして演奏活動ができるのは、家族の存在と愛情があったからこそ。しかし、一方で、モンテネグロは東西文化の交流地点であり、そこで生まれ育ったことが、今の自分自身を形作っているとも思います」
 そんな彼にとって、ギターとは?
「美しく、ロマンティックな楽器で、自分自身の音楽を表現する手段です。ギター音楽の素晴らしさをもっとたくさんの人々に知ってほしいと願っています。これからは、知られざる曲も演奏したいですし、若いアーティストとコラボレートするのも興味がありますね」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

ギター協奏曲の夕べ 12/4(木)19:00 紀尾井ホール
リサイタル 12/6(土)14:00 札幌コンサートホールKitara(小)
      12/7(日)14:00 兵庫県立芸術文化センター(小)(完売)
      12/9(火)19:00 浜離宮朝日ホール
      12/10(水)19:00 盛岡市民文化ホール(小)
      12/13(土)14:00 小金井市民交流センター
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 
http://www.pacific-concert.co.jp

【CD】
『アランフエス協奏曲/アルハンブラの想い出』
ユニバーサルミュージック
UCCG-1660
¥2800+税