シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

まさに極彩色の音響世界

 12月の読売日本交響楽団定期では現代ものを得意とするカンブルランが、メシアンの大作「トゥーランガリラ交響曲」を披露する。カンブルランのメシアンといえば、以前シェフを務めていた独SWR南西ドイツ放送響と制作した管弦楽全集で、スコアを綿密に読み解き、的確に構築していく手腕が高く評価された。深い信頼関係を築いてきた読響が相手となれば、優れた“リアリゼーション力”も一層研ぎ澄まされることだろう。
 「トゥーランガリラ」はサンスクリット語に由来した作曲家による造語で「愛の歌」を意味する。全10楽章からなり、鳥の歌や特別な旋法、不可逆のリズムなどメシアンが開発した語法の総決算ともいうべきもの。2人のソリストが繰り出す妙技も見逃せない。まずはピアノ。巨大管弦楽を相手に音の房を図太く鳴り響かせたかと思えば、愛のメロディを艶っぽく歌い上げもする。今回のソリストが、フランスものを得意とし「トゥーランガリラ」もレパートリーとするアンジェラ・ヒューイットとは何とも贅沢だ。もう一つ、この曲の独特な世界を作る上で欠かせないのが、蠱惑的な音色を持つ電子楽器オンド・マルトノだが、ソロのシンシア・ミラーは同曲を100回以上演奏してきた大べテラン。極彩色の音響世界が、聴き手を天国へと誘ってくれるだろう。
 この日のもう一つの呼びものは、酒井健治の読響委嘱新作「ブルーコンチェルト」だ。オーケストラによる委嘱初演はひところに比べるとめっきり減ってしまったが、読響は2000年以降、この分野で気を吐いている。酒井はパリで学び、現在ベルリン在住。昨年の芥川作曲賞受賞をはじめ、世界的なコンクールに次々と入賞を果たす、最も注目すべき若手作曲家の一人だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

第543回定期演奏会 
12/4(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
http://yomikyo.or.jp