びわ湖ホール プロデュースオペラ 《ばらの騎士》 制作発表

 日本でも有数のオペラ劇場として名高いびわ湖ホールが総力を挙げて制作する「プロデュースオペラ」。2024年はR.シュトラウス《ばらの騎士》(演出:中村敬一)を3月に上演する。8月28日、同ホールで制作発表が行われ、指揮を務める芸術監督・阪哲朗、キャストの森谷真理(元帥夫人役)、山際きみ佳(オクタヴィアン役)らが登壇した。

左より: 森谷真理、阪哲朗、山際きみ佳 写真提供:びわ湖ホール

 今年4月に前芸術監督の沼尻竜典からバトンを引き継いだ阪。ポスト就任後、初めて手掛ける「プロデュースオペラ」となる。
「《ばらの騎士》は、上演に関わる人数の多さや難易度、貴族社会という現代の人々にとって身近とは言えない題材を扱っている点など、様々な難しさを含んだ作品です。ただ、今年度の『びわ湖の春 音楽祭』で“ウィーンの風”をテーマとして掲げ、《フィガロの結婚》(10月・『オペラへの招待』シリーズ)、そして《こうもり》(11月・『全国共同制作オペラ』)も上演する以上、今回の『プロデュースオペラ』で取り上げるのはこの作品以外にないと考えています。
 (台本作家の)ホフマンスタールとの往復書簡からも読み取れるように、《ばらの騎士》にははっきりと言葉に言い表さない、貴族的な“ウィーンらしさ”が散りばめられています。ライトモティーフや調性の革新的、かつ巧みな扱い方などにR.シュトラウス『らしさ』が表れている一方で、モーツァルト、J.シュトラウスⅡ世ら『ウィーンの流れ』も汲んだ、集大成といっても差し支えない作品だと思います」
 さらに、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためセミ・ステージ形式が続いていた中で、4年ぶりの本格的な舞台上演となる。
「オペラは『総合芸術』と言われます。その出発点には演劇があるのです。そういった意味で今回、本来の姿に回帰することができ、嬉しく思います。かつての貴族社会においてオペラは、音楽が不得意な人にとっても『演劇としての良し悪し』を通して語ることのできるコミュニケーションツールでした。歌手の演技、動き、舞台装置や照明など、五感に訴えかける『総合芸術』としての楽しみを味わっていただけたらと思います」

制作発表より 写真提供: びわ湖ホール

 元帥夫人(ダブルキャスト・3/2)を演じる森谷は、沼尻監督時代から「びわ湖リング」をはじめ同ホールのオペラに数多く出演し、びわ湖の音楽シーンには欠かせない存在となっている。今年度も、《フィガロの結婚》の伯爵夫人役、《こうもり》のロザリンデ役での出演が予定されている。
「2014年の《リゴレット》に初めて出演して以来、びわ湖ホールさんとは長いご縁になりますが、依頼をいただいた際には『とうとう《ばらの騎士》がきたのだな』と嬉しく思いました。R.シュトラウスの音楽とホフマンスタールの台本から奏でられる優美さや華やかさ、それと共存する切なさと儚さ、そしてそれらから生まれる作品の色気を楽しんでいただきたいです。このびわ湖ホールで観てよかったと思っていただけるようなプロダクションにできるよう、全力を尽くして、その瞬間を生きる元帥夫人を演じられたらと思います」

 今回はびわ湖ホール声楽アンサンブル出身者が多数起用されているのもポイントの一つ。オクタヴィアン(ダブルキャスト・3/3)を演じる山際もその一人で、2015年から同アンサンブルに4年間在籍。その後イタリアに渡り、トリエステ・ヴェルディ歌劇場をはじめとする同地の劇場で研鑽を積んだ。今年度は、《フィガロの結婚》のケルビーノ役での出演も予定しており、まさに“故郷に錦を飾る”年となりそうだ。
「オクタヴィアンは、学生時代から心から憧れていた、メゾソプラノにとって大切な花形の役なので、今回このホールで演じることができ、大きな喜びと高揚感に包まれたような気持ちです。『時間』をテーマとする《ばらの騎士》において、感情の起伏が大きく、『自分』を軸とした世間のとらえ方で行動するこの役は“若さの象徴”だと考えています。感情が高ぶった際の、メゾソプラノにとって非常に高い音域でのギリギリ感、そして『女性が男性役を演じ、さらに劇中で女性に扮する』という、ある種の喜劇的な部分をしっかりと表現していきたいです」

 今年開館25周年を迎えるびわ湖ホール。アニバーサリーを記念した「オペラ ガラ・コンサート」も行われ(9/17)、《ばらの騎士》からも白眉である終幕の三重唱などが取り上げられるという。今回の「プロデュースオペラ」は、「創造する劇場」として多数のオペラの名演を残してきた同ホールの集大成、そして阪監督と踏み出す新たな第一歩となるだろう。公演日は2024年3月2日・3日。

Information

びわ湖ホールプロデュースオペラ
R.シュトラウス作曲『ばらの騎士』
(全3幕/ドイツ語上演・日本語字幕付)

2024.3/2(土)、3/3(日)各日14:00 びわ湖ホール 11/4(土)発売

演出:中村敬一
指揮:阪哲朗
管弦楽:京都市交響楽団

出演
元帥夫人:森谷真理(3/2)、田崎尚美(3/3)
オックス男爵:妻屋秀和(3/2)、斉木健詞(3/3)
オクタヴィアン:八木寿子(3/2)、山際きみ佳(3/3)
ファーニナル:青山貴(3/2)、池内響(3/3)
ゾフィー:石橋栄実(3/2)、吉川日奈子(3/3)
マリアンネ:船越亜弥
ヴァルツァッキ:高橋淳
アンニーナ:益田早織
警部:松森治
元帥夫人の執事:島影聖人
ファーニナル家の執事:古屋彰久
公証人:晴雅彦
料理屋の主人:山本康寛
テノール歌手:清水徹太郎

問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp