アンガス・ウェブスター(指揮) 東京交響楽団

英国の新鋭が待望の初登場!

アンガス・ウェブスター (c)Thom Axon

 イギリスの若手指揮者、アンガス・ウェブスター。2018年、10代にしてパヌラ国際指揮者コンクールで最高位を獲得、サロネンにも才能を高く評価され、各地のオケを振って着実に地歩を固めている。一昨年、東響にも登場する予定だったがコロナで流れ、いよいよこの秋にお目見えだ。実はこの間、一足早く名古屋フィルで日本デビューを果たしているが、その時の指揮ぶり・音楽作りがとても20代前半とは思えない風格を備えていると話題になった。その大器がいよいよ東京でもヴェールを脱ぐというわけだ。

 プログラム前半はイギリスもの。まずはアンナ・クライン「彼女の腕の中で」。クラインは分かりやすい作風で、近年その作品が世界中で頻繁に取り上げられている女性作曲家だ。本作は彼女の母に捧げられた弦楽合奏曲で、アルカイックで瞑想的なサウンドが聴き手の心をつかんで離さないエレジーだ。

 続くエルガーの「海の絵」は、5曲からなる管弦楽伴奏付き歌曲集。イギリスは日本と同様、島国だけに、海のみせる表情も様々だ。「エニグマ変奏曲」の成功によりエルガー人気が高まっていく中で作曲された本作は、その光景を瑞々しい言葉と雄大な音楽で活写していく。コントラルトで登場するのは、やはり若手アーティストとして注目を集めるジェス・ダンディ。音楽とメンタルヘルスを結び付ける活動も行う才媛だ。

 後半はブラームスの交響曲第4番。王道レパートリーでどんなオーケストラ・ドライヴ術を見せてくれるだろう。じっくりと耳を傾けたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年9月号より)

東京オペラシティシリーズ 第134回
2023.9/30(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
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