ヤマカズ・ウォルトン第2弾、イギリス音楽の真髄をみせる!
都響との三善晃・反戦三部作の一挙上演(5月)、バーミンガム市響の来日公演(6-7月)を相次いで成功させ、国内でも快進撃が止まらない山田和樹。その魅力はいろいろあろうが、筆者はプログラミング面でも演奏面でも、意外性で人々の心をつかむのがうまいと常々感じている。今年もまた山田は9月の日本フィルのシーズン・オープニングを振るが、これまた意外性のあるプログラム・演奏で楽しませてくれそうだ。
メインとなるのはウォルトンの交響曲第2番。昨年の第1番に続く選曲だ。バーミンガムでの経験が、山田をしてイギリス音楽の可能性に開眼させたことは想像に難くない。第2番は1番に比べて演奏頻度は少し落ちるが、第二楽章の美しい旋律や終楽章のパッサカリアの堂々とした歩みに円熟した職人芸が光る。
その前には同じくウォルトンの「宝玉と勺杖」を取り上げる。これは昨年9月に亡くなったエリザベス2世が戴冠した際、その式典のために書かれた行進曲で、豊穣な管弦楽のパレットを余すところなく用いたゴージャスな音楽だ。
コアな後半に対し、前半にモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、J.S.バッハ「シャコンヌ」というクラシックのド定番、有名すぎてむしろオケの定期などではあまり見かけない曲をぶつけてきたのも、また山田らしい。「シャコンヌ」は齋藤秀雄編曲版で、これはもちろんサイトウ・キネン・オケの看板曲だが、藝大出身で齋藤秀雄メモリアル基金賞の受賞者でもある山田はどう仕上げるのだろうか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年8月号より)
第753回 東京定期演奏会
2023.9/1(金)19:00、9/2(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp