円熟の巨匠による近代ロシアン・プログラム
秋山和慶が東京シティ・フィルの定期演奏会に客演し、リャードフの交響詩「キキーモラ」、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番、スクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」という20世紀前半のロシアの音楽を振る。リャードフはサンクトペテルブルクでリムスキー=コルサコフに学び、プロコフィエフは同地でリムスキー=コルサコフやリャードフに学んだ。そんな同門の二人の作品が並べて演奏されるのはとても興味深い。
リャードフの「キキーモラ」はロシアの民話に基づく。キキーモラとはロシアに伝わる妖精(死神)の一種。描写的な音楽が楽しい。
プロコフィエフの協奏曲で独奏を務めるのは周防亮介。2010年のダヴィッド・オイストラフ国際ヴァイオリンコンクール、16年のヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールなどで入賞し、現在はメニューイン国際音楽アカデミーで学ぶ逸材。モダンでスペイン・テイストも入ったプロコフィエフの協奏曲第2番で見事な技巧を披露してくれるに違いない。
スクリャービンはモスクワでアレンスキーらに師事した。「法悦の詩」は大管弦楽を要する神秘主義的な作品。80歳を超えてますます円熟味を増すマエストロ、秋山和慶の明快なタクトのもと、好調の東京シティ・フィルがスクリャービンの色彩的な交響曲を鮮やかに再現してくれるだろう。膨大なレパートリーを誇る秋山らしい凝ったロシア・プログラムが楽しみだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年7月号より)
第362回 定期演奏会
2023.7/7(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp