グラミー賞にも輝いた人気オペラが初上陸
一昨年・昨年とドイツ現代音楽界の巨匠アリベルト・ライマンのオペラを紹介して話題を呼んだ日生劇場。今年はユダヤ系アルゼンチン人の作曲家オスバルド・ゴリホフの《アイナダマール》(涙の泉)を日本の聴衆に問う。
詩人として活躍し、画家ダリなど時代の才人たちと親交を結んだフェデリコ・ガルシア・ロルカは、フランコ政権によるスペイン内乱のあおりを受け、わずか38歳の若さで殺される。ロルカの悲劇を題材にゴリホフが作曲した本作は、2003年にタングルウッドでの初演後、ピーター・セラーズの助言を取り入れた改訂を経て、10年ほどの間に世界各国で数多く上演された人気作だ。リリースされたCDはグラミー賞なども獲得している。
この成功は、なんといってもイベリア半島のエキゾチックなリズムや音楽を大胆に取り入れ、ラテン系らしい情念の劇的な盛り上がりを構築した点に起因するのではなかろうか。陰りを帯びた歌や、フラメンコの熱狂的な舞踏によって召喚される民俗的な生命力がオペラを再生させる。これは同じアルゼンチンの作曲家ピアソラを思わせるものでもある。
物語はロルカ(11/15・清水華澄、11/16・向野由美子)の死を女優マルガリータ・シルグ(11/15・横山恵子、11/16・飯田みち代)の視点から見るという形をとっている。演奏は昨年のライマン・プロジェクトで見事な演奏をみせた読売日本交響楽団、指揮はリズミックな音楽では思いのほか身軽なところも見せてくれる広上淳一。演出も粟國淳が担当するとあって密度の濃いステージが期待されよう。前半に俳優・長谷川初範によるロルカについてのレクチャーが予定されており、作品への理解を深めてくれる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
11/15(土)、11/16(日)各日14:00 日生劇場
問:日生劇場03-3503-3111
http://www.nissaytheatre.or.jp