札幌交響楽団の2025-2026シーズンプログラムが発表!

次期首席指揮者、エリアス・グランディが語る札響への思い

 11月26日、札幌交響楽団が札幌コンサートホールKitaraで記者発表会を開催し、2025-2026年シーズンプログラムを発表。来年4月より次期首席指揮者に就任するエリアス・グランディ、コンサートマスターの田島高宏、会田莉凡らが登壇した。

左より会田莉凡(コンサートマスター)、エリアス・グランディ(次期首席指揮者)、田島高宏(コンサートマスター)
提供:札幌交響楽団

 グランディは、1980年ドイツ・ミュンヘン生まれ。チェリストとして音楽家のキャリアをスタートし、バイエルン放送響とコーミッシェ・オーパー・ベルリンの奏者を務めた。ダルムシュタット歌劇場の常任指揮者として指揮活動を開始し(2012~16年)、2015年より8年間、ハイデルベルク歌劇場およびハイデルベルク・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めた。第7回ゲオルグ・ショルティ国際指揮者コンクールでは最高位を獲得している。

 世界の若手音楽家を育成するアカデミーの側面も持つ音楽祭のパシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)に、チェリスト(04年)、コンダクティング・アカデミー生(12年)として参加。さらに今年は客演指揮者として登場するなど、札幌との縁も深いグランディ。札響との初共演は20年のビゼー作曲のオペラ《カルメン》(グランドオペラ共同制作)。このときにグランディは札響に対しあたたかさ、繊細さを感じたという。
「このオーケストラは自由さがあり、そしてその奥に強い情熱や繊細さを隠し持っていると思います。《カルメン》で私達は出会いましたが、このときにお互いに成長できるのではと思いました」

提供:札幌交響楽団

 コンサートマスターの田島高宏は、グランディとの協働に向けた期待を次のように語った。
「《カルメン》の共演の際、音楽の喜びを共有できる“何か”を感じ、すばらしい演奏会になると確信しました。2022年の稚内での演奏会の際も、繊細に打ち合わせをしながら音楽づくりができたのが忘れられないです。
 グランディさんとはすでによい関係を結べていると感じています。名誉音楽監督の尾高さんをはじめ、スタイルを確立されているマエストロとの共演の経験は、今のオーケストラのキャラクターの“幅”として大きな財産となっているのを日々実感しています。そしてこの大きな基盤に、演奏家出身のグランディさんが加わることで、さらにお客様の心を掴むオーケストラになれると信じています。個人的には、今後ワーグナーのオペラも一緒に取り組んでみたいですね」

提供:札幌交響楽団

 同じくコンサートマスターの会田莉凡は、
「札響はリハーサル初日から高いクオリティで演奏ができますが、グランディさんはそこにさらに魔法のようなエッセンスを加えてくださる方です。彼の就任は、札響のみならず、日本のオーケストラ界にとっても素晴らしいことだと思います」と述べた。

提供:札幌交響楽団

 首席指揮者就任に先駆けてグランディは11月30日、12月1日に客演指揮者として定期演奏会に登場し、マーラーの「巨人」を指揮、そして就任後は「復活」(25.4/19,20)でシーズンの幕を開ける。グランディは「マーラーと札響は似ていると思うのです。とても繊細でありながらも、エネルギー、力強さ、パワーがあります。さらにそれは人生における一つの流れの形だと思っています。これからもこのオーケストラと探検を続けたいです。一緒に人生の様々な側面を眺め、喜怒哀楽をともにしていきたいです」とコメント。この作曲家のシリーズを継続していきたいと意気込みをあらわにした。

提供:札幌交響楽団

 2025-26シーズンの札響は、グランディを中心に、注目の指揮者やソリストとともに多彩なプログラムを展開。全8回の「定期演奏会」(16公演)、 平日の夜に札幌文化芸術劇場hitaruを会場に、邦人あるいは現代作品とオーケストラの名曲を組み合わせる「hitaruシリーズ定期演奏会」(4公演)、そして、週末の午後にKitaraで、毎回異なるテーマのもと、オーケストラに親しみを持ってもらうことを目的にしたシリーズ「森の響フレンド名曲コンサート」(4公演)の全24公演が核となる。グランディは先述の「復活」の他、ラヴェル生誕150年を記念しての「ダフニスとクロエ」第1・第2組曲やR.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」(6/28,29)、「英雄の生涯」(26.1/31,2/1)など管弦楽の粋を堪能できる楽曲を中心に取り上げる。
 
 定期演奏会は名誉音楽監督の尾高忠明が、十八番であるエルガーの交響曲第2番を指揮(26.3/7,8)。この作曲家のスペシャリストとして知られる尾高と札響のサウンドでどのような音楽が繰り広げられるのか注目だ。首席客演指揮者の下野竜也はジョン・アダムズの代表作「ハルモニーレーレ(和声学)」、正指揮者の川瀬賢太郎は邦人作曲家・別宮貞雄の「管弦楽のための2つの祈り」などを取り上げる。初共演となるデンマークの指揮者トーマス・ダウスゴーはニールセンの第4番「不滅」(10/18,19)でタクトをとる。その他も「知っている曲では新しい発見を、知らない曲には興味を持ってもらう」というコンセプトを打ち出したプログラムが並ぶ。hitaruシリーズ定期演奏会では、友情指揮者である広上淳一が札響初演となる尾高惇忠のヴァイオリン協奏曲(独奏:米元響子)を披露する。
 ソリスト陣も目が離せない。日本ピアノ界の巨匠である清水和音(4/24)は、グランディと大曲・ブラームスの協奏曲第1番で共演。近年目覚ましい活躍で話題を呼んでいる釧路市出身の若き俊英トランペット奏者、児玉隼人(26.3/19)に、上川郡鷹栖町出身のソプラノ中江早希(11/8)など“道産子”のアーティストも登場する。さらに第12回浜松国際ピアノコンクールで日本人初の優勝を飾った鈴木愛美(26.3/7,8)の出演も見逃せない。

 グランディとともに、新たな旅を始める札幌交響楽団。今後の活躍にますます期待が高まる。

札幌交響楽団
https://www.sso.or.jp

札幌交響楽団 第665回定期演奏会
https://www.sso.or.jp/concerts/2024/11/-665/