身近なホールのクラシック 弦楽六重奏の魅力

親密な空間で交わす音の対話

 6月20日に箕面市立メイプルホールで開催される「弦楽六重奏の魅力」は、若手アーティストを積極的に起用している同ホールの今を象徴する公演と言えるだろう。

 アンサンブルを率いる尾池亜美は、幅広いレパートリーを多彩なパレットで弾きわけるヴァイオリニスト。田代裕貴はスウェーデンのエーテボリ歌劇場管で第2ヴァイオリン首席奏者の重責を担う。ヴィオラの安達真理と多井千洋もそれぞれ日本フィル客演首席奏者と東響フォアシュピーラーを務める名手だ。チェロの荒井結はブラームス国際コンクールで第2位、伊東裕は葵トリオとしてミュンヘン国際音楽コンクール優勝の実績を誇り、都響の首席奏者としても活躍している。

 冒頭に演奏されるモーツァルトの協奏交響曲では、通常ヴァイオリンとヴィオラのふたりで演奏されるソロ・パートを6人でまわしていくので、メンバー一人ひとりの個性に触れることができるだろう。早熟の天才コルンゴルトが17歳のときに書いた弦楽六重奏曲は、爛熟したロマンティシズムに満たされた作曲家初期の代表作。プログラムの核となるシェーンベルクの「浄夜」は、弦楽合奏版で演奏されることも多い作品だが、月明かりの繊細な描写などはオリジナルの弦楽六重奏版でこそ味わいたいもの。箕面に集う6人の演奏であればなおさらだ。

 演奏会の前日には、メンバー全員が参加する座談会も開催される。こうした関連イベントが充実しているのも、近年のメイプルホールの特徴である。若き音楽家たちが語る作品の魅力や聴きどころを踏まえて公演に臨めば、音楽体験はより一層充実したものになるに違いない。
文:八木宏之
(ぶらあぼ2023年6月号より)

2023.6/20(火)19:00 箕面市立メイプルホール
問:箕面市メイプル文化財団072-721-2123 
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