《プラテ》は間違いなく聴く人を虜にします
今年で没後250年を迎えた、フレンチ・バロックの巨匠ジャン=フィリップ・ラモー。北とぴあ国際音楽祭の核をなす、バロック・オペラ公演を担う寺神戸亮指揮のレ・ボレアードが、その傑作オペラ《プラテ》を上演する。全能の神で浮気者のジュピテルが、嫉妬深い妻ジュノンに一泡吹かせようと、カエルの女王プラテに嘘の求婚をして、大騒動に発展するという1745年初演のコメディ・リリック(抒情喜劇)。寺神戸は「耳を澄ませば、面白い場面と音楽が次から次へと繰り広げられて、自然に物語へ引き込まれてゆくこと間違いなしです!」と熱っぽく語る。
「ラモーの音楽の斬新さには、ずっと前から魅せられていました。初めてラモーを演奏した時も、最初のリハーサルからその音楽の虜になり、一日中、色々な舞曲のメロディが頭から離れず、口ずさんでいたほど。《プラテ》も素晴らしく、やはり斬新な音楽です。序曲からして、それ以前のフランス・オペラの常識を破り、とても奇妙で惹き込まれます。しかも後になって、この序曲のモティーフが、主役のプラテのものでないのが分かるのも面白い。さて、それでは何のモティーフなのでしょう? それは、聴いてからのお楽しみです(笑)」
ステージには、プラテ役のマティアス・ヴィダルをはじめ、ジュピテルのフルヴィオ・ベッティーニ、気まぐれの精フォリーと愛の神アムールの2役を演じるベツァベ・アースら、古楽唱法と演技の両方に長けたソリスト陣が集結。寺神戸は「この音楽祭ではお馴染みのベッティーニさんは、陽気なイタリア人気質と繊細な面を併せ持つ、得難い存在。最後に奥さんにこっぴどく叱られる浮気者の役柄にぴったりです。ヴィダルさんとアースさんは今回初顔合わせ。いずれも幅広い役柄をこなすフランス期待の若手だけに、どんな魅力を発揮してくれるのか、楽しみですね」と期待を寄せる。
バロック・ヴァイオリンの先駆者である寺神戸の指揮のもと、1995年の初回以来、バロックやモーツァルトなどのオペラを「古い時代に書かれただけで、面白さや楽しさ美しさでは、ロマン派の作品に引けをとらない。オリジナル楽器だからこそ、その素晴らしさを際立たせられる」と紹介を続けてきたレ・ボレアードのステージ。
寺神戸は今後について「モーツァルトは後期の作品をまだいくつか残しているので、ぜひ。もちろんそれ以前の作品も魅力的ですね。フランス作品では、いずれリュリのオペラを、と思っています」。また「バロック・オペラが日本でもっと盛んに上演されるようになるといいですね」と力を込めて語った。
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
北とぴあ国際音楽祭
ラモー:歌劇《プラテ》 セミ・ステージ形式
11/7(金)19:00、11/9(日)14:00 北とぴあ さくらホール
問:北区文化振興財団03-5390-1221
http://www.kitabunka.or.jp