横浜みなとみらいホールが2023年度のラインナップを発表

第2代プロデューサー・反田恭平が始動!

 2月14日、横浜みなとみらいホールが記者懇談会を行い、2023年度の公演ラインナップを発表した。登壇者は、同ホール館長の新井鷗子、ホールオルガニストの近藤岳、プロデューサー 2021-23 のカウンターテナー藤木大地ら5名。

 同ホールは2023年で開館25周年を迎える。新井はこれからのホールのあり方について次のように述べた。
「四半世紀の間、急速にグローバル化が進み、パンデミック、戦争、気候変動など世界情勢の目まぐるしい変化からの影響を、音楽界も直に受けるようになってきた。芸術文化という名のもとにクラシック音楽が守られている時代は終わり、公共ホールには地域の文化の交流拠点としての役割が求められている。横浜みなとみらいホールはお客様を音楽でもてなすという原点に立ち返り、社会の今とつながる音楽を発信していきたい」

新井鷗子

 2023年度は、世界で活躍する演奏家が公演をプロデュースする「プロデューサーin レジデンス」、昨年オーバーホールを済ませた同ホールの顔ともいえるオルガン「ルーシー」、を軸に豪華ラインナップが用意された。
 演奏家が計画段階から携わり、企画性の高い演奏会の実現、演奏家自身のプロデュース力の向上を目指して始まった「プロデューサーin レジデンス」。初代プロデューサーの藤木は自ら企画した2公演に出演。
 「みなとみらいアコースティックス 2023」(7/31)では藤木のほか、第2代プロデューサーへの就任が決まっている反田恭平、藤木&反田と同じ年の日本音楽コンクールで優勝した務川慧悟の3人が大ホールで共演。藤木は「反田が次期プロデューサーに決まる前から共演を考えていた。大ホールをひとつの楽器として、生の音の良さを感じてほしい。彼らのソロやデュオも盛り込んだプログラムにしたい」と企画を説明した。
 「横浜うたまつり」(4/21)は中川晃教、サラ・オレインなどクラシック以外のジャンルの一流歌手と共演するステージ。藤木は「横浜を日本のうたの都にしたいと思い企画した。それぞれのファンに来てもらうことで、このホールの素晴らしさを知ってもらい、ファン層を広げ、リピーターを増やしたい」と意気込む。この公演には県内の音楽大学の学生による合唱団のほか、横浜を拠点とした全国の事業者との共同を進める「藤木大地ネットワークプロジェクト」の一環として山形交響楽団も出演する。

藤木大地

 4月から第2代プロデューサーとして活動をスタートする反田もコメント動画を寄せた。企画公演として、25周年のフィナーレを飾るフェスティバル「横浜みなとみらいホール 25周年音楽祭」(2024.3/20~3/24)、自身がオルガンの演奏に挑戦する「オルガン道場」(23.7月~25.3月)が予定されており、動画では次のようにコメント。
「前館長で作曲家の池辺晋一郎先生に指揮者のための(弾き振りの)ピアノ協奏曲を委嘱しており、世界初演します。横浜は思い入れのある土地で、横浜みなとみらいホールは置かれているピアノも好きで、力をもらえる素敵なホール。1人でも多くの人にクラシック音楽を聴いてもらうため、いろんな角度から企画をしているので楽しみにしていてほしい」

反田恭平

 ホールオルガニストの近藤は「ルーシー」のオーバーホールについて「日頃のメンテナンスでは手の行き届かない所まで調整する、いわば大掃除。25年間弾き込まれ成熟してきた楽器が大規模な調整期間を経て、次の成熟期へと向かう」と説明。
 2023年度はこれまでも行ってきた「1ドルコンサート」「1アワーコンサート」のほか開館25周年企画として近藤がプロデュースした「Dive into the Future」(23.6/9)を開催。オルガン、ジャズ・ピアノ、エレクトロニクス、サクソフォンの共演で、バッハから現代音楽、即興までを披露。近藤は「たくさんのスピーカーを設置し、これまでのホールでは聴けなかったであろう新しい響きを織り交ぜていく、目玉の公演になる」と意気込みを語った。
 24年3月には、「オルガン・リサイタル・シリーズ 47」として、バロック演奏における第一人者、鈴木雅明のオルガン・リサイタルを開催(24.3/1)。バッハ・コレギウム・ジャパンの合唱メンバーとの共演も予定されている。

近藤岳

 そのほか、40年以上の歴史を持つシリーズ「横浜市招待国際ピアノ演奏会」(11/3)や「Just Composed 2024 in Yokohama ―現代作曲家シリーズ―」(24.3/2)が例年通り行われるほか、セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(23.11/4)、フランツ・ウェルザー=メスト指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(11/15)など海外の一流オーケストラも登場。
 子ども向けのコンサートや、新井館長が開発に関わる「だれでもピアノ®」を用いた音楽の社会的価値に関する研究など、インクルーシブな企画も盛りだくさんな内容となっている。

左より: 藤木大地、 新井鷗子、 近藤岳

 リニューアルオープンを経て進化した、横浜みなとみらいホールのフルバージョンの1年に注目したい。

横浜みなとみらいホール
https://yokohama-minatomiraihall.jp