東京オペラシティ B→C 鶴田麻記(トランペット)

花形楽器のホープが300年の時を超える

(c)Takuya Okamura

 最近は金管楽器界でも若手女性奏者の活躍が際立っている。トランペットの鶴田麻記もその一人。1月の東京オペラシティ「B→C」の主役は彼女だ。1994年北海道生まれの鶴田は、東京藝術大学で学び、日本音楽コンクール第2位ほか数々の賞を受賞。2018年から札幌交響楽団の副首席奏者を務めている。

 今回の「B=バッハ」は、ヴァイオリンを原曲とする協奏曲ニ長調と有名なコラールが3曲。協奏曲はピッコロ、コラールはD管のトランペットを用いるとのことなので、まずはその音色変化を楽しみたい。またピッコロトランペットを得意とする彼女は、ヘンデルのオーボエ協奏曲も同楽器で演奏。「高音域も無理なく輝かしい音色で吹ける」と語るこの楽器による2曲は、鶴田の特長を堪能できる大きな聴きどころだ。一方「C=コンテンポラリー」も、冒頭のカーゲル以下、巨匠の作品が並ぶ。なかでもトランペット、ヴァイオリン、ピアノという珍しい編成の近藤譲「冬の間に」が特筆もの。「3つの楽器の音色が調和して、冬の森の中のような風景が広がる」と語る同曲の生演奏は貴重な聴きものとなる。なお、ヴァイオリンは札響の同僚・赤間さゆら、ピアノは公演全体で下田望が受け持つ。さらには、「ミュートの有無により遠近感が巧みに表現される」武満徹の「径(みち)」、「トランペット作品や吹奏楽曲を聴いて委嘱を望んだ」西村朗の新作、「特殊奏法と超絶技巧が要求される」ベリオの「セクエンツァⅩ」等、興味津々の演目が並ぶ。

 明るく柔らかな音色で魅せる若きホープの勝負リサイタル、管楽器ファンならずとも要注目だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年1月号より)

2023.1/17(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp