世界で活躍する実力派で聴くスラヴ音楽の魅力
神奈川フィル初登場となる指揮者ダニエル・ライスキンは、サンクトペテルブルク生まれ。マリス・ヤンソンス、ネーメ・ヤルヴィ、ヨルマ・パヌラ(サロネンやマケラを育てた名教師)といった錚々たる名匠たちの教えを受けた。これまでロシア国立響、モスクワ・フィル、マリインスキー劇場管、ハノーファー北ドイツ放送フィルなど名門オーケストラを多数指揮、現在スロヴァキア・フィル首席指揮者、カナダのウィニペグ響音楽監督およびセルビアのベオグラード・フィル首席客演指揮者を務めている。
録音も多く、近年のブラームス「交響曲全曲」、ショスタコーヴィチ「交響曲第4番」、マーラー「交響曲第3番」は高い評価を得ている。これらを聴くと、指揮は堂々としており、まさに正統派。ブラームスは内声部を充実させ、ショスタコーヴィチは鋭い切り口と強靭なパワーがあり、マーラーはドラマティックでスケールが大きい。
今回はライスキンが得意とするスラヴ音楽(チェコ、ロシア)を取り上げる。チャイコフスキー「幻想序曲『ロメオとジュリエット』」はお国ものであり、スメタナ「モルダウ」とドヴォルザーク「交響曲第8番」はスロヴァキア・フィルでの経験が生きる。今年6月に配信された同オケとのドヴォルザーク「交響曲第7番」は第3楽章が特に民族色豊かな演奏だった。ライスキンはオーケストラと信頼を築き、リハーサルと本番で新しい感情と発見を導き出すことに重点を置く。このところ絶好調の神奈川フィルとライスキンは、作品に新たな命を吹き込む新鮮な演奏を聴かせてくれるに違いない。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2022年9月号より)
定期演奏会 第380回
2022.10/15(土)14:00 神奈川県民ホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
https://www.kanaphil.or.jp