ポーランド音楽出版社のオンラインヴァイオリン教育プロジェクト「ショパンの国の音楽」がスタート

 PWMの呼称で知られるポーランド音楽出版社(Polskie Wydawnictwo Muzyczne)は、クラシック音楽からジャズ、映画音楽に関する楽譜と書籍の出版を専門としているポーランド最大の出版社。特にショパンやパデレフスキを始めとする、自国ポーランドの作曲家の楽譜や書籍を世界各国に向けて提供しており、ポーランドで最も重要な音楽機関のひとつに数えられ、教育分野でも積極的な活動をおこなっている。

 このたび、ポーランド文化・国家遺産省​​の助成を受けて新たに始動するのが「ショパンの国の音楽  ヴァイオリン版2022プロジェクト」。ポーランドの作曲家といえば、ショパンを除けば、日本で名前が挙がるのはシマノフスキ、パデレフスキ、ルトスワフスキ、ヴィエニャフスキ、そして一昨年に亡くなったペンデレツキといったあたりだろうか。2020年のピアノ・シリーズに続き、PWMは今回、日本やヨーロッパ諸国などを対象に国際的なキャンペーンを実施しており、知られざるポーランド作曲家による作品の普及、教育的レパートリーの拡充を目指す。

PWMのダニエル・チヒ社長

 今回ヴァイオリン・シリーズに収められているのは、すでによく知られているヘンリク・ヴィエニャフスキ Henryk Wieniawski(1835-1880)、カロル・シマノフスキ Karol Szymanowski(1882-1937)や、近年、日本でも紹介される機会が増えつつあるグラジナ・バツェヴィチ Grażyna Bacewicz(1909-1969)の作品から、アダム・ヴロニスキ Adam Wroński(1850/51-1915)、クシェシミル・デブスキ Krzesimir Marcin Dębski(1953- )といった知られざるポーランド作曲家による、ヴァイオリンのための豊富な作品群。これらに加えてショパンのピアノ作品をヴァイオリン版に編曲した作品もあり、充実のレパートリーが並ぶ。また、初心者からプロフェッショナルまでさまざまなレベルの作品が網羅されており、多くの演奏家にとって魅力的なシリーズとなるだろう。(日本では残念ながら楽譜の出版はなし)

 本プロジェクトではその一環として教育的コンテンツも制作されている。PWMの公式YouTubeチャンネルにて、全25本のレッスン動画が今年6月27日より随時公開中。日本語の字幕が用意されているものもある。ポーランド音楽のイニシアチブをとるヴァイオリニストや教育者による、実演を含んだ楽曲解説や、奏法などの技術的な解説が盛り込まれた充実したコンテンツとなっている。また、楽譜に収録されているすべての楽曲は、第13回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで優勝したアガタ・シムチェフスカによって演奏され、こちらもYouTubeにて随時公開されている。

グラジナ・バツェヴィチ:ポーランドのワルツ|アガタ・シムチェフスカ(ヴァイオリン)

 さらに、今回のプロジェクトには、イギリス、イタリア、ドイツ、フランス、日本から5人が参加した。いずれも、教育活動も精力的に行っているヴァイオリニストたちで、日本からは、葵トリオのメンバーとして国際的に活躍する小川響子が参加している。

ショパン:ノクターン 嬰ハ短調(遺作)|小川響子(ヴァイオリン)

 ポーランドの出版社が提供する、同国の新たな作曲家たちと出会える貴重なプロジェクトにぜひ注目したい。

Chopin’s Land
https://fromchopinsland.com/editions/2022/

PWM公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/PWMEdition